【質問】
先日、同業者の社長から、試用期間中の解雇は、予告手当がいらない、と聞いたのですが、本当でしょうか?
【回答】
試用期間中であっても、14日を超えて雇用していた場合には、解雇予告手当の支払い又は解雇予告期間が必要となります。
【解説】
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労働基準法第20条では、労働者を解雇する場合には、30日以上の解雇予告期間か平均賃金日額の30日分以上の解雇予告手当の支払いを使用者に課す解雇予告制度を規定しています。
ところで、解雇予告制度が、適用されない適用除外の規定が、労働基準法第21条に定められています。
解雇予告制度が適用されないケースは、具体的には以下とされています。
① 日々雇い入れられる者
② 契約期間が2ヶ月以内の者
③ 4ヶ月以内の季節的業務に使用される者
④ 試みの使用期間中の者
今回のご質問と関係してくるのが、④の「試みの使用期間中の者」です。
では、「試みの使用期間中の者」とは、具体的にどのような労働者を指すのでしょうか?
実は、これに関しては法律で規定されていて、労働基準法では、試みの使用期間を14日間としています。
つまり、雇用してから14日以内の解雇の場合には、解雇予告手当を支払う必要がありません。
逆に考えれば、雇用し14日を超えれば(雇用して15日以上経過すれば)、解雇予告手当を支払わなければならないこととなります。
ところで今回のご質問で重要となってくるのが、解雇予告制度の適用除外である、「試みの使用期間」と「試用期間」との関係です。
結論から言いますと、「試みの使用期間」と「試用期間」とは、全くの別制度です。
と言うより、無関係と言った方が良いかと思います。
試用期間は、一般的には「長期雇用を前提として労働者の勤務態度、能力、技術等を見て、本採用するかどうかを決定するために設けられている期間」とされています。
ここで注意すべき点は、試用期間とは、法律的に義務けられているものではないため、試用期間中であっても、通常の雇用契約と同じとなります。
つまり、試用期間中であっても、雇用日から14日を超えてからの解雇には、解雇予告が必要となります。
「試みの使用期間」と「試用期間」とは、漢字が持つ雰囲気やイメージが似ているところがあるので、誤解している経営者の方が結構多くいます。
ですから、試用期間中であっても、14日を超えて雇用している労働者を解雇する場合には、解雇予告が必要ということを正しく理解する必要があります。
「試みの使用期間中の者」の解雇について、もう1つ注意すべき点についてお話したいと思います。
先にお話しした労働基準法第20条の規定は、
「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。」
となっています。
この規定を読めば、30日以上前に予告するか解雇予告手当を支給すれば、労働者を解雇できる、と解釈する方も多々いるかと思います。
ある意味それは、正しいと言えます。
元々、労働者を雇用するということは、労働者と労働契約を締結する、ということです。
契約ですので、当然、双方に解約する権利があっても良いはずです。
しかし、使用者に無条件に解約権を認めてしまうと、労働者の安定した生活が保障されません。
解雇予告制度の趣旨は、解雇される場合であっても、30日分の賃金が保障されれば、労働者は、その期間に次の就職先を見つけることができる、という趣旨で規定されています。
つまり、解雇予告制度は、解雇する際の手続きに過ぎないのです。
そして、解雇の場合には、もう1つ重要なポイントがあります。
それは、解雇する理由の妥当性、正当性です。
解雇理由の妥当性、正当性は、労働基準法の問題ではなく、民事上の問題となります。
たとえ、法律通りに解雇予告手当を支払った場合でも、解雇理由に解雇に値するだけの妥当性、正当性が無いと判断された場合には、不当解雇となってしまいます。
つまり、試みの使用期間中の解雇であっても、解雇するにはそれ相応の解雇理由が必要となります。
これは、試みの使用期間中の解雇に限ったことではないのですが、誤って認識されている経営者の方も多いので、十分ご注意下さい。
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社会保険労務士 松本 容昌
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