有給休暇の買取りを請求されたのですが・・・。

有給休暇は、従業員の権利ですが、わが国においては、その取得率の低さは、周知の通りです。

従業員にとって、消化できなかった有給休暇を買取って欲しいと思うのは、ある意味当然の感情かもしれません。

また、経営者のとっても、支払う賃金の額は同じであるため、何の問題も無いように思えます。
 
 
しかし、有給休暇の買取は、原則、禁止されています。

本ブログでは、有給休暇の買取についてわかりやすく解説してあります。
 
【関連記事】 >>Q4 意外!退職時は有給休暇を買取った方がメリットが多い・・・?

有給休暇は、翌年度に限り繰り越しができます


有給休暇は、入社後一定の要件を満たした場合には、6ヶ月経過後正社員の場合には、10日付与されます。

そして、さらに1年経過後11日が付与されます。つまり、入社後1年6ヶ月経過すると11日付与されるわけです。

その後、1年経過する度ごとに、12日、14日、16日、18日と付与される日数が増えていき、最終的には、6年6ヶ月経過後20日が付与され、それ以降は何年経過しても、付与される日数は20日となります。

つまり、20日が付与される日数の上限となります。
 
 
ところで有給休暇は、翌年に限り繰り越す事ができます。

これはどういう事かと言いますと、例えば、入社後1日も有給休暇を取得しなかった場合で、入社後1年6ヶ月が経過とします。

先程ご説明しましたように、有給休暇は、1年6ヶ月経過後は11日付与されます。

しかし、入社後6ヶ月経過後に付与された分の有給休暇の10日も繰り越される事となります。

ですから、入社後1日も有給休暇を取得しないで1年6ヶ月経過した時点での有給休暇の日数は、本年度の11日と前年度の10日との合計で21日となり、向こう1年間の間に21日間の有給休暇を取得できる権利が生じます。

有給休暇はこのような考え方をするので、最終的には1年間で使用できる日数は最大で40日となります。
 
 
ところで、見方を変えると、有給休暇は、翌年度使用できなければ消滅してしまう事となります。

先程の例で言えば、入社後1年6ヶ月以降も1日も有給休暇を取得しなければ、入社後2年6ヶ月経過時点で、新たに12日間の有給休暇が付与されます。

しかし、この時点で、入社後6ヶ月経過した時点で付与されていた10日間の有給休暇の取得の権利が消滅してしまいます。

従業員にとっては、何とも勿体ない感じがします。

ですから、このような時に考えられるのが有給休暇の買取です。

有給休暇の買取りは、法的に禁止されています


有給休暇の買取りは、消滅してしまう有給休暇を従業員が、会社に買取請求をするというものです。

確かに有給休暇は労働をしないで通常の賃金を支払うため、取得できなかった有給休暇を買い取ることには合理性があります。

しかし、有給休暇の買取は法律で禁止されています。

逆に言えば会社は、従業員から有給休暇の買取を請求されても応じる必要はありません。
 
 
何故、このような定めとなっているかと言いますと、有給休暇の買取を認めてしまうと、有給休暇の取得を抑制することとなってしまうからです。

確かに、有給休暇を買取してもらえれば、その分もらえる賃金の額は増えます。

しかし、有給休暇の元々の趣旨は、労働者の心身の疲労回復、労働力の維持培養が目的であるため、有給休暇の買い取りを認めてしまうと、本来の目的から逸脱してしまうこととなるからです。

ですから、有給休暇の買取りはその請求に応じる必要がないと言うより、買取り自体が違法となってしまいます。
 
 
実際、この有給休暇の買取請求については、従業員の方からよく問い合わせがある事項なので、是非、憶えておいていただければと思います。

退職時の有給休暇の買取りは、例外で認められています


ただし、有給休暇の買取に関しては、1つ例外があります。
 
退職時に残っている有給休暇を買取る事だけは認められています。

退職時に関しては、有給休暇を別の日に取得する事が出来ないため、従業員の利便性を考慮して、退職時に限り有給休暇を買取しても法律違反とはならないとされています。
 
ただし、買取をしても法律違反にならないだけで、必ずしも買取請求に応じる必要はありません。
 
 
ところで、有給休暇は、労働日にしか取得することはできません。

ですから、有給休暇の残日数が20日で、退職日までの出勤日数が8日間の場合には、有給休暇を取得できるのは、最大に8日ですので、12日間が残ってしまいます。

この12日間について、会社は有給休暇の買取に応じても応じなくてもどちらでも良いこととなります。

もし、有給休暇の買取に応じなった場合には、12日間については、未消化のまま退職となります。

従業員サイドからみると少し不条理に思えてしまいますが、法律的にはこのような取扱いとなります。
 
 
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社会保険労務士 松本 容昌
 
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