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【質問】
先日、インターネットにドラゴンクエストというゲームをクリアするために有給休暇を取得する、という記事が載っていたとことを聞いたのですが、本当のゲームのために有給休暇を与えなければならないのでしょうか?
【回答】
有給休暇の利用目的は、法律が関与しないもので、有給休暇をどのように利用するかは、労働者の自由とされています。従って、たとえゲームのためであっても有給休暇を与えなければなりません。
【解説】
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有給休暇は、労働基準法で定められた労働者に与えられた権利で、入社6ヶ月を経過後、出勤率等の一定の要件を満たした場合には、自動的に労働基準法で定められた日数が付与されます。
さて、ご質問のドラゴンクエストのために有給休暇を取得できるか?についてですが、有給休暇の利用目的については、最高裁の判決が出ており、「年休の利用目的は労働基準法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由であるとするのが法の趣旨である」とされています。
つまり、有給休暇をどのように利用するかは、労働者の自由であり、業務の正常な運営を阻害するためのストライキといった特殊なケースを除いて、利用目的によって、有給休暇の取得に対して会社が制限を加えることは出来ません。
従って、ドラゴンクエストのための有給休暇の取得であっても、会社は、有給休暇の取得の申請を拒否することはできません。
さて、ここで有給休暇の取得についてもう少し詳しくお話したいと思います。
先程、お話しましたように有給休暇は、入社後6ヶ月を経過した時点で、一定の要件を満たしていれば、自動的に労働者に法律で定められた日数が付与されます。
ところで、有給休暇は、労働者に当然に与えられるものであるから、当然に自由に取得できる権利がある、と思われがちでですが、正確には正しい解釈ではありません。
少し法律的な話しとなってしまいますが、労働基準法では、労働者に対して有給休暇を当然に取得する権利を与えているのではなく、会社は、有給休暇を労働者が指定する時季に与えなければならない、としています。
これを有給休暇の時季指定権と言います。
例えば、今回のご質問を例にすると、労働者がドラゴンクエストのために平成29年5月15日に有給休暇を取得したいと思った場合に、労働基準法では、平成29年5月15日に有給休暇を当然に取得する権利を労働者に与えているのではなく、会社は、労働者が指定した時季に有給休暇を与えなければならない、としています。
前者と後者では同じように思われるかと思いますが、実は、法的な意味合いが少し違うのです。
前者の場合のように、有給休暇を当然に取得できる権利を与えるということは、会社は、無条件に有給休暇の取得を認めなければなりません。
しかし、労働基準法では、有給休暇の時季指定権に対して、会社側の時季変更権を認めています。
つまり、会社は、労働者が指定した時季に有給休暇を与えなければならないのですが、事業の正常な運営が妨げられる場合には、有給休暇の取得の時季を変更する権利を会社側に認めているのです。
つまり、労働者は、法律的には、100%無条件で有給休暇を取得できるわけではないのです。
では、ドラゴンクエストのために有給休暇の取得を申請してきた労働者に対して、有給休暇の時季変更権は認められるのでしょうか?
確かに、ゲームのために会社を休まれて、その結果、売上が落ちれば、納得がいかない、というのも経営者の立場に立てばわからないではありません。
しかし、これまでお話ししてきましたように、有給休暇は、自由利用が大前提ですので、有給休暇の利用目的と事業の正常な運営とは、基本的には関係がありません。
あくまで、有給休暇が申請された日に有給休暇が取得されることによって、事業の正常な運営が妨げられるか否かが判断されることとなります。
事業の正常な運営が妨げられるか否かの基準については、法律で明確な基準が定められていないので、事案ごとに判断されますが、有給休暇の時季変更権が認められるには、ハードルが非常に高いと言えます。
従業員10人程度の会社で、8人が一斉に同じ日に有給休暇の申請が出されれば、さすがに、事業の正常な運営が妨げられる場合とみなされる可能性が高いと言えますが、個々の労働者の有給休暇の申請が、業務に支障を与えるケースというのは、本当に稀な場合と言えます。
というのは、これは個人的な考えですが、個々の労働者が急病で会社を休んだ場合、事業の正常な運営が妨げられでしょうか?
多少の支障はあるでしょうが、ほとんどの場合、通常に業務が行われるはずです。
労働者が急病で休む度ごとに、通常の業務が出る方が、問題があると言えるでしょう。
このように、会社には有給休暇の時季変更が認められているものの、認められるケースは非常に難しいと言えます。
従って、ドラゴンクエストための有給休暇の取得であっても、会社は、有給休暇の取得を認めるざる得ないと考えられます。
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社会保険労務士 松本 容昌
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