【質問】
「当社は、従業員数が8人です。就業規則は、従業員数が10人以上の場合は、労働基準法で作成しなければならない決まりだそうですが、当社のような10人未満の会社でも作成した方が良いのでしょうか?」
【回答】
「はい、従業員数が、10人未満の会社でも秩序ある職場環境を維持するためには、就業規則は、必要です。また、労働トラブルの防止にも有益です。」
【解説】
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ご質問の通り、労働基準法では、労働者数が常時10人未満の事業場では、就業規則の作成の義務を課してはいません。
しかし、従業員を雇用している限り、一定のルールが必要となってきます。
例えば、従業員の冠婚葬祭の時にどのような対応をするのか、いわゆる 慶弔休暇が、良い例だと言えます。
慶弔休暇自体は、法律定められたものではないので、 慶弔休暇が無くても法律的には問題ありません。
しかし、従業員本人の結婚や親の弔事などには、現実的に会社を休まざるえません。
ですから、実際には、何らかの形で、会社は、休暇を認めているのが現実と言えます。
しかし、そのような場合に、一定のルールが無ければ、 従業員によって休暇の日数が違ったり、給料の支払い の有無に差があった場合には、従業員にとっては、不公平さを感じ、会社に対して不信感を抱きかねません。
また、就業規則が、近年、特に重要となっているのが、 休職制度と解雇です。
近年、うつ病等のメンタル的な病気を患う労働者が非 常に多くなってきました。
メンタル的な病の特徴は、再発の可能性が高いことと、 症状が外観から非常にわかり難い点が挙げられます。
ですから、うつ病等の休業と職場復帰を繰返す場合や、 復帰時において、従来の業務ができるまでに完治して いるのか、判断が難しい場合が考えられます。
このような場合にどのように対応するか、ルールが無 ければ、対応が非常に難しくなります。
メンタル的な病での休職の場合、退職も視野に入れ ざる得ない場合も想定されます。
ですから、明確なルールが無ければ、従業員との間 で大きなトラブルとなってしまう可能性も十分に考え られます。
また、解雇についても、就業規則の存在が、非常に重要となってきます。
解雇された労働者が、訴えを起こし、裁判等で解雇の 正当性、妥当性の有無について判断される際に、解雇の「根拠」が、重要視されています。 解雇の根拠とは、通常、就業規則の解雇規定がそれに該当します。
つまり、解雇規定の有無が、解雇の正当性、妥当性 の判断に大きな影響を与えるということです。
当然、解雇規定がある方が、解雇の正当性、妥当性 が認められる可能性が高くなります。
ここで重要となってくるのが、このような考え方は、従業員数に左右されるものではありません。
つまり、就業規則の作成義務が無い企業であっても、労働者を解雇し、労働者が訴えを起こした場合には、解雇規定の存在が、当然に重要視されるのです。
このような従業員との間のトラブルは、従業員数に関係なく、どの会社にも起こる可能性はあります。
これは、私の経験ですが、従業員数が少ない会社 ほど、経営者と従業員との距離が近いため、トラブ ルが起こってしまった場合には、経営者にかかる精神的なストレスは大きくなってしまいます。
このように就業規則は、従業員が安心して働くこと ができる職場環境の形成と労働トラブルを防止するため、必要不可欠なものです。
ですから、たとえ、労働基準法上で就業規則の作成義務が無くても、今後の会社発展のために、就業規則を作成することをお勧めします。
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社会保険労務士 松本 容昌
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