休職制度とは、業務外の病気や怪我等の理由でで、一定期間労働が出来ない場合であっても、雇用関係を維持する制度です。
この休職制度は、就業規則の項目の中でも近年において非常に重要な項目となってきています。
本ブログでは、就業規則と休職制度についてお話ししたいと思います。
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休職制度は設ける方が良いのか?
休職制度は、法的に事業主の方に求められる義務ではありません。
休職制度が、無くても法律上問題ありません。
では、休職制度は、設けた方がいいのでしょうか?という疑問が生じるかと思います。
まず、あくまで個人的な見解ですが、休職制度を設けるか否についてお話ししたいと思います。
本来、雇用というものは、労働者は、適正な労働力を提供し、使用者は、その対価として賃金を支払うという契約を締結することです。
一般的に、労働契約雇用契約と言います。
しかし、業務外の病気や怪我等労働者側の都合で一定期間休業せざる得ない場合には、労働者は契約上の責務を果たすことができなくなります。
ですから、経営者からすれば労働契約を解除、つまり解雇することも可能となってきます。
従業員にとって、不幸にも大きな怪我や病気をした場合に、一定期間、従業員の身分が保障されていれば、従業員は、安心して治療に専念できるため、休職制度は、福利厚生面から考えても設ける方が良いと言えます。
しかし、それとは、別の視点で考えてみると、どの位の期間、休業したら適正な労動力を提供できない状態になるかの判断は、非常に曖昧です。
つまり、そこに規定が無ければ、判断を下すのが困難となります。
労働者にとっても、曖昧な判断基準で労働契約を解除されれば、納得できない場合も多々考えられます。
休職制度には、「休職期間や休職期間中に病気や怪我が回復せず、復職できない場合等には自然退職とする」といった規定を定めるので、経営者が、労働契約の終了時期も明確になってきます。
ですから、休職制度は、労働者保護の観点ももちろんありますが、実際に一定期間休業を余儀なくされた労働者に対しての取扱いの基準が明確になるため、その面からも休職制度は設ける方が良いと考えます。
休職期間の設定には注意が必要です
休職制度は、従来は、重病や大怪我をした場合のためにあり、雇用期間中において複数回取得することは想定されていませんでした。
一度、休職制度を利用した労働者、再度取得することは、可能性としては低かったと言えます。
仮に、再度取得する場合でも、再度の取得までに相当の期間があるのが通常と考えられていました。
しかし、近年、うつ病等のメンタル的病で休業する労働者増加してきました。このような場合、従来の休職制度に対する考え方では、少し問題が生じる場合があります。
例えば、休職期間が、6ヶ月の場合で、5ヶ月目で復帰して、しばらくしてまた休職して、また休職期間が満了する前に復帰して、またしばらくして休職するということを繰返して行けば、理屈上は、永遠に休職、復帰また休職を繰返すことができます。
実際、このような制度の盲点を悪用した事件も報道されました。
つまり、休職制度を設ける場合、休職期間を設定する際に、このような事態が起こる可能性あることを前提に制度を導入する必要があります。
具体的には、「類似の事由での再休職を会社が認めた場合は、従前の休職期間を通算する」等の文言を入れておく必要があります。
実際、最近のモデル就業規則等にも、このような文言を入れているのが多くなってきていますが、少し前に作られた就業規則では、このような文言が抜けているものも存在します。
ですから、長年、就業規則の見直しをされていない場合には、是非、一度早急に見直しをすることをお勧めします。
復職時の設定にも注意が必要です
労働者が、休職期間を満了しても病気や怪我が回復せずに職場に復帰できない場合は、通常は、自然退職となる規定を定めます。
このような場合、労働者が規定通りに退職すれば、問題は無いのですが、病気や怪我が回復していないのにも関わらず、復帰を希望する場合もあります。
怪我の場合であれば、休職期間満了時に完全に回復していなくても、ある程度、今後の回復の見込みは想像できます。
病気、特にメンタル的な病の場合は、事業主の方にとっては、判断が難しいところがあります。
ですから、このような場合を想定して就業規則に対処法を定めておく必要があります。
例えば、会社が指定する医師等の診断を受けさせるとかリハビリ期間を設けて一定期間様子を観察するといった規定を考える必要があります。
休職制度の場合は、労働者の病状等を会社が知る必要が出てきます。
しかし、労働者の病状等は、個人情報となってきますので、業務上必要ではありますが、事業主が、労働者に一定の指示・命令できる規定の存在が必要となってきます。
休職制度は、前回お話ししましたメンタル的な病のように、従来に比べて、注意すべき事項が非常に増えてきています。
ですから、就業規則を作成する場合には、休職制度については、十分時間をかけて検討する必要があります。
また、少し前に作成した就業規則では、リスク管理面かみて不十分な場合も考えられますので、見直しをすることをお勧めします。
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社会保険労務士 松本 容昌
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