Q37.健康保険の傷病手当金とはどのような制度ですか?

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【質問】
 
「当社の従業員が、病気で長期休業することとなりました。このような場合、健康保険の傷病手当金が利用できると聞きました。傷病手当金とはどのような制度なのでしょうか?また、有給休暇との関係についても教えて欲しいのですが。」
 
【回答】
 
「はい、業務外の病気又は怪我等で、労務不能となった場合には、健康保険から傷病手当金が支給されます。ただし、有給休暇等で給料が支給された日については、傷病手当金は支給されないか減額されます。」
 
【解説】
 

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健康保険制度には、従業員が、業務外の病気や怪我等で労務不能となり、休業を余儀なくされた場合に、一定の所得を補償する傷病手当金制度があります。

傷病手当金についてはいくつかの要件があります。
 
 
まず、働くことが出来ない状態、専門用語で「労務不能」であることが必要です。

労務不能についての証明は、医師等に証明してもらうこととなります。

具体的には、傷病手当金申請書に医師が、労務不能であることを証明する欄がありますので、そこに労務不能であること証明してもらいます。
 
 
そして、少し難しいのですが、傷病手当金を受給するには、「待期」が完成している必要があります。

傷病手当金は、労務不能の状態になった日から起算して、4日目から支給され、最初の3日間については支給されないこととなっています。

この最初の3日間のことを「待期期間」と言います。
 
 
「待期」は、労務不能の日が、3日間連続して初めて完成します。

ここで重要となってくるのが、労務不能の日が、3日間連続する必要があるのです。

例えば、最初の2日間、労務不能で休業し、3日目に出勤して、再び4日目に労務不能で休業しても、労務不能の日が、3日間連続していないので、待期は、完成したこととならないのです。

従って、この時点では、傷病手当金の要件を満たしていないこととなります。
 
 
ちなみに、4日目、5日目、6日目と労務不能で休業した場合には、6日目で待期が完成したこととなり、結果的に、7日目から傷病手当金は、支給されることとなります。
 
 
待期に関してよく質問を受けるのですが、途中で休日が入っている場合があります。
 

待期については、あくまで労務不能の日が、3日間連続すれば良いので、たとえ、休日であっても、その日が、労務不能であれば、待期は、完成することとなります。

例えば、労務不能になった日が金曜日で、土曜日と、日曜日が公休日であっても、土曜日と日曜日が労務不能であれば、待期は、完成することとなります。
 
 
傷病手当金の支給額は、原則、過去1年間の標準報酬月額を用いて算出します。

具体的には、傷病手当金の支給開始日より前の継続した12ヶ月間の標準報酬月額の平均を30日で割った額の3分の2が支給されます。

例えば、平成31年4月1日より傷病手当金の支給が開始され、平成30年5月から7月までの標準報酬月額が26万円で平成30年8月から10月までの標準報酬月額が22万円で、平成30年11月から平成31年4月までの標準報酬月額が32万円とすると、12ヶ月間の平均は28万円となりますので、傷病手当金の1日の額は、28万円÷30日×2/3=6,222円となります。(※支給開始日以前12ヶ月間ですので、支給開始した日の月が含まれます。)

なお、支給開始日以前の期間が12ヶ月無い場合には、次のいずれか低い方の額を使用します。

① 支給開始日の属する月以前の直近の継続した各月の標準報酬月額の平均
② 
28万円(支給開始が、平成31年3月31日までの方)
30万円(支給開始が、平成31年4月1日以降の方)
※②の金額は毎年見直されますのでご注意下さい
 
 
また、傷病手当金は、労務不能の日について支給されるので、休業期間中に公休日が含まれている場合でも、その日が、労務不能であれば、支給されます。
 


最後に、有給休暇と関係ですが、有給休暇の取得目的は、基本的には問われないので、私傷病で休業を余儀なくされる場合であっても、有給休暇を利用することは全く問題ありません。

ただし、傷病手当金の申請期間において、給料が支払われていた場合で、その額が、傷病手当金の額よりも多い場合には、傷病手当金は、支給されないこととなっています。

ですから、先程、例で言えば、有給休暇の1日分の額が、6,222円以上支払われた場合には、傷病手当金は支給されないこととなります。
 
 
また、支払われた給料の額が、傷病手当金より少ない場合には、傷病手当金との差額が支給されることとなります。

これは、例えば、休業中の場合基本給は支給されないが、手当等が支給される場合があります。
 
 
先程のケースを使って1つ事例を上げたいと思います。

例えば、先程の計算で傷病手当金の1日の額が7,000円の従業員が、4月1日から20日間休業したとします。

休業期間中の基本給は、支給されなかったのですが、月額で支給されている、家族手当は、控除されず全額支給されたとします。
 
 
このような場合、休業期間中でも給料が支給されたとみなされるので、傷病手当金は、調整されます。

仮に、家族手当の額を月額3,000円とすると、1日の額は、100円となりますので、傷病手当金の支給額は、1日につき、7,000円-100円=6,900円が支給される計算となります。

ですから、もし、有給休暇の1日分の額が、傷病手当金の額よりも少なければ、差額が支給されることとなります。

以上が傷病手当金の概要となります、ご参考になさって下さい。
 
 
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社会保険労務士 松本 容昌
 


 

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