難解な労務管理知識をわかりやすく解説!毎日わずか3分で1年後、専門家レベルの幅広い知識が身につく完全無料メールセミナー「労務365日」のご登録はこちら
【質問】
「日本年金機構から、健康保険と厚生年金保険の調査に入る旨の通知がきました。調査では、どのような事を調べられるのでしょうか?同業者に聞くと、試用期間中も社会保険に加入させる必要があると聞きました。当社では、試用期間中は社会保険が、未加入の従業員が数名いるのですが・・・。」
【回答】
「社会保険の調査は、加入者、加入日及び月額変更の適正化について調査されます。社会保険は、試用期間中であっても、加入条件を満たした時点から社会保険へ加入させる必要があります。」
【解説】
▼就業規則の見直しをご検討の方はこちら
>> オフィスまつもと 就業規則変更・作成サービス
従業員を雇用後、試用期間中は社会保険が未加入のケースは、実際には多々あるようです。
ところで、社会保険の調査項目ですが、具体的には、3つあります。
まず、社会保険に加入すべき労働者を、加入させているかどうかを調査します。
さらに、社会保険の場合、支給されている賃金を基に、保険料が決定されるので、法律通りに賃金の額が、申告されているかも調査の対象となります。
そして、現在、社会保険に加入している労働者の加入日が、正しく加入されているかを調査するのです。
ところで、社会保険へ加入するかどうかは、あくまでその従業員の労働時間及び労動日数によって判断され、決して名称等で「加入する、しない」が決められるものではないのです。
ですから、たとえ、パートタイマーやアルバイトと呼ばれる従業員であっても、また、試用期間であっても、その従業員の労働時間及び労働日数が、社会保険の加入基準を満たしていれば、社会保険に加入させなければならないのです。
もし、社会保険の加入条件を満たしている従業員が、試用期間の間未加入で、調査の時に指摘を受け、加入日を試用期間の開始日に溯ることとなります。
ところで、社会保険の保険料の徴収の時効は、2年間となります。
その関係で、調査される期間は、過去2年間となります。
ですから、過去2年間に、試用期間終了後に社会保険に加入するなど、入社日より何ヶ月か遅れて、社会保険に加入させている場合には、溯って、加入日を入社日等に変更しなければならなくなります・・・。
仮に、試用期間が半年間で、社会保険への加入日を試用期間が終了する6ヶ月後にしていた場合には、半年前に溯って加入日を変更しなければならないのです。
実際にこのようなことが起こったら、「半年間も溯るの?もう少し短くならないの?」と思われると思います。
しかし、これも以前、「時効」についてのブログでも書いたのですが、行政官庁は、「根拠の無い日付」というものを用いることはないのです。
>>Q87.時効にかかれば、未払い給料を支払う必要はないのですか・・・?
加入日を溯る場合に、「根拠のある日付」は、入社日だけです。
ですから、入社日以外の日を加入日にすることは、無いのです。
さて、では、社会保険の調査で、加入日を溯るとどのような問題が起こるのでしょうか?
ご存知のように、社会保険の保険料は月単位となっています。
ですから、もし、半年前に社会保険の加入日を溯るということは、半年分の社会保険の保険料の支払いが発生するのです。
仮に、1ヶ月の保険料が、健康保険と厚生年金保険合せて、5万円でしたら、5万円×6ケ月=30万円の保険料が必要となります。
しかも、一括で支払う必要があります。
もし、同じように入社日と加入日が半年違っていた労働者が3人いれば、90万円の保険料が必要となってきます。
もちろん、社会保険の保険料の2分の1は、労働者が負担します。
しかし、試用期間等の理由で社会保険へ未加入のままにしておいて、今になって、保険料を支払ってくれと労働者に言うのは、労働者からしてみれば、納得がいかない、と思う労働者も多いと思います。
会社に対して、不信感を持つことにも繋がりかねません。
ですから、結局は、社会保険料の労働者負担分も会社が、負担せざる得ない場合も出てきます。
仮に、労働者が負担することとなっても、一括ではなく、分割にする場合も考えれます。
そうなれば、給与計算時の手間も増えます。
何より、社会保険の加入日の溯りの手続きをしなければならないのです。
これはあくまで私の推測ですが、一度、調査で加入日の溯りの指導等を受ければ、次回の調査までの間隔が短くなるなど、今後の調査への影響も考えられます。
ですから、入社日から加入日を遅らせていた場合、後でそれを訂正するということは多大な労力と費用がかかってしまう場合があるのです。
確かに、試用期間の間に辞めてしまう労働者もいます。
しかし、その場合でも、支払った保険料は、1ヶ月か2ヶ月分です。
その時点だけで考えれば、無駄だったような気がします。
でも、全体的に見れば、試用期間終了後に社会保険に加入させるということは、決して「得」をするものではないはずです。
是非、今後のご参考になさって下さい。
▼就業規則の見直しをご検討の方はこちら
>> オフィスまつもと 就業規則変更・作成サービス
社会保険労務士 松本 容昌
毎日わずか3分で1年後、専門家レベルの幅広い知識が身につく
難解な労務管理知識をわかりやすく解説してあります。
毎日わずか3分で、しかも無料で正しい労務管理知識を習得でき、あなたの会社が益々発展します。
当事務所では、労務管理に関する無料相談を行っておりますので、労務管理等に関するご質問等ありましたらお気軽にご相談下さい。
(東京)03-5962-8568
(静岡)053-474-8562
対応時間:9:00~18:00(月~金) 休日:土日祝日
なお、メールでのお問い合わせはお問い合わせフォーム(メールフォーム)をご利用ください。
(※メールでお問い合わせの場合は、必ず電話番号をご記入下さい。法律解釈の誤解が生じてしまう恐れがありますので、メールでのご回答はいたしておりませんので、ご了承下さい。また、せっかくお電話いただいても外出中の場合もありますので、その点もご了承下さい。)