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【質問】
「当社では、これまで従業員が退職する時に、口頭でのやり取りで済ませていました。ところが、先日、同業者から、退職した従業員が、労働基準監督署に異議を申し立てて、退職届を提出させていなかったので、非常に苦労したという話しを聞きました。従業員が、自分の意思で辞めるので、特段、退職届の提出は、必要ないように思えるのですが・・・。」
【回答】
「労働トラブル防止の上で、「退職届」は非常に重要な意味を持ちます。従業員が、退職する場合には、必ず退職届を提出させるようにしてください。」
【解説】
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誰もが知っている退職届ですが、実は、労働トラブル防止の上でこの「退職届」は非常に重要な意味を持ちます。
当たり前のことですが、従業員が、会社を辞めたいと思う時に、退職届を書きます。
従業員が退職届を提出する時は、退職勧奨等一部の特殊な場合を除いて、結婚、転職、仕事が面白くない、人間関係が嫌だ等様々な理由があるかと思います。
しかし、いずれにしても、それは基本的には、従業員の都合で辞める理由です。
従業員の都合で辞めるのだから、退職届を提出させなくても、トラブルが起こる理由が無いと思われるかもしれませんね。
しかし、私の経験から、退職届が無かったために、トラブルとなった、或いはトラブルになりそうになったケースは結構多いのです。
以前、労働トラブルの最大の原因は、「労働契約締結時に書面を用いない」と書きました。
では、労働トラブル発生の2番目の理由は?と聞かれれば、この「退職届を提出させない」を挙げます。
確かに、結婚や親の介護、配偶者の転勤に伴う退社等、ある程度理由が明確な場合には、まず問題は起こりません。
しかし、実際労働者が退職をする場合、「一身上の都合」といった、理由で退職する場合がほとんどです。
もちろん、「退職の具体的な理由」を聞くことはあるでしょうが、事業主の方も、本人都合で辞めるのだから、あまり掘り下げて退職理由について話し合うことは少ないと思います。
しかし、自己都合で退職した従業員が退職後に会社に何か申し立てを言ってきたりするケースを実際に私自身何度も経験しています・・・。
また、退職した従業員は、雇用保険の手続きで退職後ハローワークへ行きます。
その手続きの際に、ハローワークの職員に、離職票に退職理由が「自己都合」と書かれているにも関わらず、「私は辞めさせられた」とか「雇用時との約束が違う」と言って、職員が、私のところへ退職時の状況について確認の連絡をする、といったことが度々あります。
つまり、従業員は退職時には、本当の事を必ずしも言うとは限りません。
もちろん、「私は辞めさせられた」とか「雇用時の約束が違う」と言っても、それが従業員が、自身の都合の良いところだけを言っている場合も多いのが現実です。
しかし、現実に従業員が申し立てをしたり、ハローワークから退職時の状況確認をされたら、それに対応せざるえません。
その時に、客観的証拠が無ければ、結局は、「言った」「言わないの」の水掛け論となってしまいます。
退職後のトラブルの大きな問題は、従業員が既に退職しているため、従業員と話す機会を持つことが難しく、従業員の意思が解り難い点にあります。
また、事業主と従業員との間に行政官庁等が入る場合には、事業主の方にとって大きなストレスとなります。
「退職届」があれば、問題解決の大きな根拠となります。
退職届を提出させれば、少なくとも従業員は自分の意思で退職届を書いたわけですから、後で「本当は辞めさせられた」と主張しても、「では、何故退職届を書いたのですか?」と反論することができます。
もし、仮に従業員が退職の提出を拒めば、そこで従業員が思っていることを聞くことができ、話し合いの機会を持つことができます。
そうすれば、未然にトラブルを防止できる可能性が高くなります。
退職届1枚があるかないかによって、状況が、本当に変わってきます。
是非、今後のご参考になさって下さい。
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社会保険労務士 松本 容昌
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