雇用契約書の重要性を正しく理解すれば、多くの労働トラブルを防ぐことが出来ます。
本ブログでは、雇用契約書の重要性について、具体的にお話ししていきたいと思います。
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書面での通知は全ての従業員に行う必要があります
雇用契約書について重要なポイントがいくつかありますが、まず、最初に法律的な事を1つお話させていただきます。
労働基準法では、使用者は労働者を雇用した場合、労働者に対して賃金、就業時間、休日等の重要な労働条件については書面で通知する事が求められています。
ですから、労働条件を口頭等での通知で済ませる事は、そもそも法律違反となるわけです。
まず、この点をご理解いただきたいと思います。
さて、法律を守る事はもちろん重要なのですが、今回、お話したい事は労働トラブル 防止の観点からの雇用契約書の重要性についてお話ししたいと思います。
私はこれまで数多くの労働トラブルを経験してきましたが、以前にも書きましたが、労働トラブルの一番の原因は、労働条件を法律通りに書面で通知していない事です。
つまり、数多くの労働トラブルは、労働条件を口頭ではなく書面で通知していれば防ぐことが出来たのです。
また、これまで労働基準監督署の方や労働組合の役員の方の講演等も何回か聞いたのですが、その方々も労働トラブルの一番の原因は、労働条件の通知を書面でなく口頭で済ませてしまう事にある、と言っていました。
このように、労働条件を口頭ではなくしっかりと書面で通知する事でかなりの労働トラブルを防ぐ事ができるのです。
ですから、どんなに忙しくても労働条件を書面で通知するようにして下さい。
さらに、気を付けなければならないのは、以前にも何回かお話しましたが、パートタイマーやアルバイトといった社員も労働基準法上では正社員と同じ労働者として扱われます。
ですから、労働トラブルは、パートタイマーやアルバイトといった社員との間でも発生の可能性はありますので、パートタイマーやアルバイトといったいわゆる非正規社員を雇用する場合にも必ず書面での労働条件の通知を行って下さい。
雇用契約書での形の方が望ましいです
繰り返しになりますが、労働基準法では賃金等の重要な労働条件は書面での通知が求められています。
つまり、労働基準法では書面で通知すれば良く、実は、雇用契約の締結までは求められていないのです。
しかし、労働トラブル防止の観点からすれば雇用契約書を締結する方が望ましいと言えます。
と言うのは、雇用契約の場合、契約ですから、労働者の署名、捺印が必要となります。
この「署名・捺印」をする行為が、非常に重要なんですね。
つまり、通知だけだと後で「聞いてない」「知らなかった」といった事を言われてしまう可能性があります。
雇用契約書に「署名・捺印」があれば、雇用契約書に記載されている事項に ついて後で「知らなかった」「聞いていない」といった言い訳はできなくなるわけです。
ですから、労働者への労働条件の通知は、必ず雇用契約書少なくとも、通知書受領の署名・捺印をもらうようにしておくのが労働トラブル防止の基本となります。
ところで、先程「署名・捺印」をすれば、その記載事項について後から「知らなかった」「聞いていない」といった言い訳はできなくなる、と書きましたが、となると雇用契約書の記載事項が非常に重要となってきます。
労働トラブルを防止するには、雇用契約書の記載事項に十分に吟味する必要があります。
記載事項の注意点につきましては、後述したいと思います。
ここで、少し実務的な事をお話したいと思います。
雇用契約書を締結する場合には、必ず事業主の方あるいはそれに変わる人が 従業員と直接面談して、雇用契約書を説明するような形を取ることをお勧めします。
これは、労働トラブル防止の面からも重要なのですが、このようにしっかりとした形で雇用契約を締結すれば、従業員も安心感を得る事ができます。
雇用契約書は、法律で定められた労働者の権利も記載する必要があります。
従業員は労働するに当たり、権利について大きな不安をもっています。
権利が明確になっていれば、それだけ安心して働く事ができるのです。
また、労働者は、その会社をしっかりとした会社と認識するかと思います。
このような意識を労働者が持つ、ということは経営的にみても非常に重要なんです。
ですから、たとえ20分でもいいですので、労働雇用契約の時は、必ず面談して雇用契約書を締結するように心がけて下さい。
先程、書きましたように労働トラブルを防ぐには、雇用契約書の内容が重要となってきます。
法定労働時間を超えての契約は、法律違反となります
では、雇用契約書を作成する上での法的な注意点をお話したいと思います。
まず、労働時間についてですが、労働時間は、労働基準法で1日8時間1週間40時間を超えて労働させてはいけない
と定められています。(一定規模の一部の業種については1週間44時間まで認められています)
この上限時間を法定労働時間と言います。
ですから、たとえ労働者との合意があってもこの法定労働時間を上回る労働時間の 雇用契約を締結することはできない事となります。
次に休日ですが、休日については1週間に1日又は4週間に4日の休日を与える必要があります。
ここで、先程の法定労働時間と休日の関係をもう少し考えてみます。
例えば、1日2時間の労働時間の場合は、1日の法定労働時間8時間を下回って いますし、仮に1週間全部労働しても14時間なので、1週間40時間の法定労働時間も下回っています。
このような場合には、1週間1日の休日でも法的に問題ありません。
では、1日の労働時間が、8時間の場合はどうでしょう?
1日8時間労働の場合、1週間のうち5日労働した時点で40時間となります。
従って、それ以上労働させる雇用契約は法的違反となります。
となると、1日8時間労働の従業員を雇用した場合は、休日は、週に2日与える必要が出てきます。
仮に週休2日制が難しい場合には、変形労働時間制を導入する必要等が出てきます。いずれにしても、労働時間と休日との関係は労働条件においても重要な位置を 占めますので、注意が必要となってきます。
ところで休日に関してですが、労働者に与える休日は法律の要件を、満たしていればさえ良く、曜日については制約がありませんので、必ずしも日曜にする必要なく、何曜日を休日にしてもかまいません。
また、毎週決まった曜日に与える必要も無く、1週間に1日の休日が取れれば、いわゆるシフト制で休日を与えても全く問題ありません。
休日に関しては労働者にとっても関心が高い労働条件なので、間違った取り扱いを すると、トラブルに発展する可能性が高いので、経営上の問題としても重要となってきますので、是非ご注意いただければと思います。
休憩時間は、労働時間中に与える必要があります
次に、休憩時間についてお話したいと思います。
労働基準法では、使用者は労働者に6時間を超えて労働させる場合には最低でも45分、8時間を超えて労働させる場合には最低でも1時間の休憩を与えなければならない、と定められています。
従って、1日の労働時間が6時間以下ならば休憩時間がなくても法的には問題ありません。
休憩時間で注意すべき点は、休憩時間は労働時間中に与えなければならない点です。
例えば、1日8時間の労働時間の場合、休憩時間は45分でいいのですが、その45分の休憩は必ず労働時間中に与える必要があり、8時間労働した後で45分の休憩を与えたのでは法律に違反してしまいますので注意が必要です。
ここでもう少し詳しく見ていきたいのですが、先程書きましたように休憩時間は労働時間が8時間を超えた場合に1時間与える必要があります。
仮に1日の所定労働時間8時間の場合、休憩時間を45分と定めること自体は問題ないのですが、時間外労働をさせた場合には労働時間が、8時間を超えてしまうので、あと15分の休憩が必要となります。
さらに、先程書きましたように休憩時間は労働時間中に与える必要が あるので、極端な例ですが、時間外労働を5分行う場合でも、休憩15分をとってから5分間の時間外労働を行わせる必要があります。
従業員サイドから見れば、早く労働を終えて帰社したいと思うのですが、休憩15分を取ってから時間外労働を行わなければならなくなります。
ですから、私個人としてはこのような弊害をなくすために、所定労働時間が8時間の場合は、休憩時間は、最初から60分とするように勧めています。
法的立場から言えば、休憩時間は60分与えれば、何時間労働させても問題が 無くなるので、法令遵守を考えた場合には、休憩時間は60分とした方が、運用的には問題が少ないと思います。
ただ、あくまで法的に問題が、無いだけであって、長時間の時間外労働を強いる場合には、適時休憩時間を与える必要があるのはもちろんの事です。
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休憩時間は、分割して与えることも可能です
また、休憩時間は、必ずしも1度にまとまって与える必要はなく、労働時間中であれば分割して与えても問題ありません。
従って、お昼に60分の休憩を取れないようでしたら、お昼45分、午前又は午後に15分、或いは午前に5分、午後に10分といった休憩の与え方でも法律的には問題ありません。
次に賃金についてですが、賃金は、最も重要な労働条件のため労働基準監督署の調査を受ける場合にはず厳格にチェックされます。
特に最低賃金のついては必ず最低賃金を上回る金額で雇用契約を締結する必要がありますので、是非ご注意いただければと思います。
今回は、雇用契約書についてお話してきましたが、雇用契約を締結する事は、労働トラブルを防止する観点から最も重要な事と言えます。
また、実際に雇用契約の内容については法律要件を満たしている必要がありますので、是非、今後のご参考になさって下さい。
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社会保険労務士 松本 容昌
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