【質問】
「従業員から有給休暇の取得の請求があった場合に、時期を変更できる権利が、事業主にはあると聞いたのですが、本当でしょうか?当社は、零細企業のため、月末等の繁忙期に有給休暇を請求されると、人員的な面で苦労することが多いので、本当に、有給休暇の時期を変更することができたらありがたいのですが・・・。」
【回答】
「確かに、労働基準法では、事業主に対して有給休暇の時期を変更する権利(時季変更権)を認めています。ただし、有給休暇の時季変更権が認められるには、合理的な理由が必要となってきます。」
【解説】
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ご存知のように労働基準法では労働者に対して有給休暇の取得の権利を認めています。労働者は、入社後、6ヶ月を経過した時点で一定の要件を満たせば有給休暇が付与されます。
付与された有給休暇を労働者は、好きな時期に使うことができます。
ちなみに、労働者が有給休暇を使う権利を、法律的には、「時季指定権」と呼びます。
ところで、先程も書きましたように、労働者は、有給休暇を好きな時にできる、というのが法律的原則となります。
しかし、無条件に有給休暇の取得を認めてしまうと、業務に支障が出てしまう場合が考えられます。
ですから、労働基準法では、事業の正常な運営が妨げられるときには、事業主に対して、有給休暇を拒否する権利(時季変更権)を認めています。
ただし、有給休暇は、自由利用が原則ですので、時季変更権が適正であると認められるには、それなりの合理的な理由が必要となってきます。
有給休暇の時期変更権の適否は、様々な要件を総合的に判断されますが、現実的には、有給休暇の時季変更権が認められるには、非常にハードルが高いと言えます。
これはあくまで個人的な意見ですが、従業員に半数以上が、一斉に有給休暇を取得する場合とか、有給休暇の取得の請求があった日が、たまたま他の従業員が出張等の理由で、代替要員の確保が困難である、といった特別な場合に初めて有給休暇の時季変更権が適正とみなされる位のものと考えた方が良いかと思います。
また、事業主の労働者が指定した時季に年休がとれるための配慮の有無も重要なポイントとなってきます。
つまり、通常の範囲を超えた特別な状況あり、事業主も労働者が指定した時期に有給休暇が取れるように配慮を尽くしたが、それでも時期を変更せざる得ない、といった状況でようやく時季変更権の行使が適正と認められる、といったイメージでしょうか。
ですから、単に、「忙しい」とか「人手が足りない」といった程度では、有給休暇の時季変更権は、まず認められない、と考えた方が無難と言えるでしょう。
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社会保険労務士 松本 容昌
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