年間休日を正しく計算するには・・・?

 
近年、労働者の休日に対する意識が非常に高くなってきています。

新卒の学生や転職希望者は、求職活動において年間休日の日数を重要視しています。
 

また、年間休日の日数は、労働時間の上限との関係においても密接な関係があります。

従って、適正な労務管理を行う上で、年間休日の日数を正しく計算することは、重要なポイントとなります。

本ブログは、年間休日の計算方法についてわかりやすく説明してありますので、本ブログをお読みになれば、年間休日の計算方法の概要を理解できるかと思います。
 
 
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そもそも休日とは?


まず最初に休日の定義について少しご説明したいと思います。

休日とは、労働基準法や就業規則、雇用契約等により規定された、労働する義務のない日を言い、原則午前0時から午後12時までの一暦日を言います。

休日は、必ずしも日曜日や祝日を休日にする必要はなく、また、会社自体を必ずしも休業にせずに、各労働者の休日が異なっても問題ありません。
 
 
つまり、休日とは、単に労働する義務のない日を言い、休日自体が、特定の日や曜日を意味することはありません。

ただし、休日に関しては、労働基準法の規定があり、また、労働時間の上限の規定との関連がありますので、法律の基準を満たす範囲の中で休日を定める必要があります。

年間休日と法定労働時間との関係


では、次に労働基準法と休日との関係についてお話ししたいと思います。

労働基準法第35条により、会社(正式には使用者)は、労働者に対して少なくとも1週間に1日又は4週間に4日休日を与えなないといけない、とされています。

労働基準法に規定されている休日に関する主な法律は、実は、これだけです。

つまり、休日だけについて言えば、1週間に1日休日を与えれば、労働基準法違反とはならないこととなります。
 
 
しかし、労働時間の上限との関連を考える必要があります。

労働基準法第32条では、労働者に労働させることができる時間の上限を定めています。

これを法定労働時間と言います。
 
 
法定労働時間とは、具体的に、1日8時間、1週間40時間とされています。(ただし、特例として、労働者数が、常時10人未満で商業、保健衛生業等の一定の業種については、1週間44時間とされています。)

この法定労働時間は、休日と密接な関係があり、年間休日を計算する場合に、法定労働時間を考慮する必要があります。
 
 
先程、ご説明しましたように、労働基準法では、1週間に1日又は4週間に4日休日を与えれば良いとされていますが、1日の労働時間が、8時間の会社では、1週間に1日だけの休日では、1週間の労働時間が、48時間となり週の法定労働時間を超えてしまいます。

そのため、1週間に1日だけ休日を与えれば良いという法律の規定にも関わらず、結果的に1週間に2日以上の休日を与える必要があります。(完全週休2日制)
 
 
ところで、中小企業においては、完全週休2日制を導入できない企業も多くあります。

そのような場合についての、年間休日の計算につきましては、後で詳しくご説明したいと思います。

法定休日と法定外休日について


ところで、1週間に2日の休日を規定した場合、2日とも労働の義務が無い日という大きな枠組みで考えれば、同じ休日ですが、労働基準法上では、休日の種類が違ってきます。

先程、ご説明した労働基準法で規定されている、1週間に1日又は4週間の4日の休日を法定休日と言います。

そして、法定休日以外の休日を法定外休日と言います。
 
例えば、土曜日、日曜日が休日の会社で、日曜日を法定休日とした場合には、土曜日が、法定外休日となります。
 
 
法定休日と法定外休日で最も大きな違いは、割増賃金を計算する際の割増率です。

法定休日に労働させた場合の割増率は、3割5分増以上ですが、法定外休日は、2割5分増以上となります。
 
 
ところで、少し余談になりますが、就業規則等で、休日の割増賃金について、単に、「休日労働についての割増率を3割5分とする」といった規定にしてしまうと、本来では、割増率が、2割5分で済む法定外休日についても3割5分増の割増賃金を支払わなければならなくなりますので、ご注意下さい。

では、年間休日の計算について詳しくご説明していきたいと思います。
 
 
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所定労働時間によって必要な休日日数が違います


先にご説明したように、労働基準法では、法定労働時間が、1日8時間、1週間40時間と定められているため、所定労働時間が、1日8時間の場合には、法定労働時間である、1週間40時間を超えないようにするには、完全週休2日制が必要となります。(一定規模以下の特定の業種に関しては、44時間となっています。)
 
 
しかし、多くの中小企業の場合、完全週休2日制を導入するのは困難と言えます。

そのため、月又は年を単位にして、平均して1週間の労働時間を40時間以下 にする、という変形労働時間の制度が定められています。

一般的に利用されているのが、1か月単位の変形労働時間制と1年単位の変形労働時間制です。
 
 
では、最初に、1か月単位の変形労働時間制における休日と労働時間との関係についてご説明したいと思います。

1ヶ月単位の変形労働時間制とは、1ヶ月以内の一定期間の週の平均労働時間を40時間以内にすることにより、特定の日に8時間を超えて又は特定の週に40時間を超えて労働させることができる制度です。

簡単な事例でご説明したいと思います。

分かりやすくするために、一定期間を4週間とします。
 
 
例えば、休日が、土曜日、日曜日の会社で、1日の労働時間を第1週と第3週を9時間、第2週と第4週を7時間とした場合に、週の労働時間は、平均すれば40時間となります。

このような場合には、第1週及び第3週に法定労働時間を超えて、1日9時間労働をさせても法律違反とはなりません。
 
 
これが、1か月単位の変形労働時間制の基本的な考え方になりますが、これを少し応用して、1日の労働時間を8時間と固定して、第1週と第3週の休日を3日とすれば、第2週と第4週の休日が、週1日であっても、週の平均労働時間は、40時間以内となります。

業種によっては、週単位で繁忙期と閑散期があり完全週休2日制を導入できない会社は、1か月単位の変形労働時間制を上手に利用すれば、法律の基準を満たすことができますが、上記の例では、月又は年間単位では休日の数そのものは減らせないこととなります。
 
 
1か月単位の変形労働時間制では、週単位では休日の数を減らすことができますが、月又は年間単位での休日の数を減らすのは、難しいところがあるため、特別に繁忙期と閑散期が無く、1日労働時間を変動させることができない会社では、完全週休2日制を補うことは難しいと言えます。
 
 
そのため、完全週休2日制を導入できない多くの中小企業が利用しているのが、1年単位の変形労働時間制となります。
 
この制度は、完全週休2日制は取れない場合でも、年末年始休暇やお盆休暇等の休日を加味して、1年間を平均して、1週間の労働時間を40時間以下にする制度です。
 
 
1年単位の変形労働時間制、1日の所定労働時間によって、必要な年間休日の日数が 変わってきます。

例えば、1日の所定労働時間7時間30分の場合には、必要な年間休日は、87日(閏年は88日)となります。

 
ここでは、その計算の方法についてご説明したいと思います。

最初に1年間に1週間が、何週あるかを計算します。

1週間は7日ですので、365日÷7日=52.14週となります。

これまでご説明しましたように、週の法定労働時間40時間ですので、1年間で考えると、年の総法定労働時間は、52.14週×40時間=2,085時間となります。
 
 
1日の所定労働時間が、7時間30分であれば、2,085時間を7時間30分で割れば、年間の就業可能日数が算出されます。

2,085÷7.5=278となり、年間278日就労可能となります。

従って、必要な年間休日の日数は、365日-278日=87日となり、87日の年間休日が必要となります。
 
 
ちなみに、逆算で確認してみますと、年間の休日日数が87日ということは、年間の総労働時間数は、(365日-87日)×7時間30分=2,085時間となります。

先程計算したように、1年間は、52.14週ですので、1週間の平均労働時間は、2,085時間÷52.14週=39.98時間となり、40時間を超えないこととなります。
 
 
同様にして年間休日を計算すると、所定労働時間が、

8時間の場合には、105日

7時間45分の場合には、96日(閏年は97日)

7時間20分の場合には、85日(閏年は86日)

となります。
 
 
年間休日が85日ですと、隔週2日制に年末年始、お盆休暇等を加えれば、多くの中小企業がクリアできる数字と言えます。

このように完全週休2日制を導入できない中小企業にとっては、1年単位の変形労働時間制は、非常に重要な制度となります。
 
 
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年間の労働日数には上限があります

ただし、ここで注意が必要なのは、1年単位の変形労働時間制には、年間の労働日数に上限が設けられています。

具体的には、280日が上限の労働日数となります。

逆に言えば、年間休日は、85日(閏年は、86日)が、最低ラインとなります。
 
 
ですから、例えば、所定労働時間が、7時間の場合には、上記のような計算をすれば、必要な年間休日は、67日で、1週間の平均労働時間が40時間を超えないこととなりますが、このような場合でも、280日以上労働させることはできません。

つまり、1年単位の変形労働時間制の場合には、年間休日は、85日(閏年は86日)以上が必要となってきます。

なお、1年単位の変形労働時間制を導入するには、従業員代表との書面による労使協定及び協定届等を労働基準監督署に提出する必要がありますのでご注意下さい。
 

1年単位の変形労働時間制の重要性について


先程、1年単位の変形労働時間制を導入するには、労働者代表との書面による労使協定及び協定届等を労働基準監督署に提出しなければならない、と書きましたが、実は、この届出は重要な意味をもちます。

1年単位の変形労働時間制は、労使協定及び協定届等を労働基準監督署に提出して、初めて制度を導入できます。
 
 
例えば、A社とB社があり、両社とも1日の所定労働時間が、7時間20分で年間の休日数が85日とします。

A社は、1年単位の変形労働時間制の労使協定及び協定届等を労働基準監督署に提出していますが、B社はしていません。

この場合、B社にどのような問題が起こるのでしょうか?
 
 
労働基準監督署の事業所調査では、必ず割増賃金の不払いについて調査します。

1年単位の変形労働時間制の導入には、労使協定及び協定届等の提出が必要ですので、もし、未提出であれば、1年単位の変形労働時間制の適用は認められないこととなります。

となれば、単純に週の法定労働時間である40時間が、各週に適用されることとなります。
 
 
1年単位の変形労働時間制で年間休日が85日の場合、通常は、1年間に25週程度は、1週間に1日だけの休日となります。

つまり、1週間に6日勤務となり、週の労働時間は、6日×7時間20分=約44時間となり、法定労働時間である40時間を約4時間超えてしまいます。
 
 
もし、1年単位の変形労働時間制の届出を出していれば、法定労働時間を超えた約4時間について割増賃金を支払う必要はないのですが、届出をしていなければ、1年単位の変形労働時間制は、適用されていないとみなされるので、割増賃金の支払いが必要となってきます。
 
 
仮に時給単価が、1,000円の労働者の場合、4時間についての割増賃金は、1,000円×1.25×4時間=5,000円となります。

4時間分の割増賃金を支払わなければならない週が、年間25週あったら、5,000円×25週=125,000円の不足があるとみなされます。

もし、同じような労働者が10人いれば、125,000×10人=1,250,000円もの割増賃金の未払いがあることとなってしまいます。
 
 
このように、1年単位の変形労働時間制の届出していないと、多額の割増賃金不払いが発生してしまう恐れがありますので、ご注意下さい。
 
 
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法定労働時間の特例措置対象事業場について


ここでは、法定労働時間の特例措置対象事業場について少しお話ししたいと思います。

先にも少し触れましたが、常時雇用する労働者数が、10人未満の事業場で、下記の業種については、週の法定労働時間が、44時間と緩和措置が規定されています。

①商業:卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、その他の商業
②映画・演劇業:映画の映写、演劇、その他興業の事業
③衛生保健業:病院、診療所、社会福祉施設、浴場業、その他の保健衛生業
④接客娯楽業:旅館、飲食店、ゴルフ場、公園・遊園地、その他の接客娯楽業
 
 
特例措置事業場において、1日の所定労働時間が、7時間の場合には、週の休日が1日であっても、週の労働時間は、7時間×6日=42時間となり、44時間の法定労働時間内となります。

また、所定労働時間が、1日8時間の場合でもあっても、1週間のうち1日の労働時間を4時間以下にすれば、週1日の休日でも、法律の基準を満たすこととなります。
 
 
このように、特例措置対象事業場では、年間休日については、特例措置の対象となっていない事業場と比べて、労働時間、年間休日の規定が非常に緩和されることとなります。

ただし、特例措置対象事業場について1つ注意すべき点があります。
 
 
特例措置の対象となる事業場は、常時雇用する労働者数が、10人未満であることが必要です。

つまり、常時雇用する労働者数が、10人以上となった時点で、特例措置対象事業場とはならなくなります。
 
 
そして、常時雇用する労働者には、正規労働者だけでなく、パートタイマーやアルバイト等も含まれます。

ですから、正規労働者が、たとえ1人であっても、それ以外のパートタイマーやアルバイト等の労働者を含めて常に10人以上いれば、特例措置対象事業場には該当しないこととなります。

まず、この点にご注意下さい。
 
 
さらに、特例措置の対象となる事業場で、常時雇用する労働者数が、今後10人以上となる可能性が低い事業場であれば、週の労働時間を44時間に設定することは、さほど問題はないのですが、その可能性が考えられる事業場では、週44時間の労働時間に設定することについては、慎重に検討される方が良いでしょう。

先程、ご説明しましたように、特例措置対象事業場で1日の労働時間が、7時間の事業場であれば、1週間に1日の休日、つまり、年間休日は、約53日で法律の基準を満たします。
 
 
しかし、常時雇用する労働者数が、10人以上となった時点で、特例措置対象事業場ではなくなるため、1日の労働時間が7時間であれば、先程、ご説明したように、1年単位の変形労働時間制を用いたとしても、年間の休日日数は、最低でも85日必要なり、30日以上休日を増やす必要があります。

年間の休日日数を30日以上増やすことは、労務管理において非常に難しいことと言えます。
 
 
ですから、現時点で特例措置対象事業場に該当したとしても、将来、常時雇用する労働者の数が、10人を超える可能性があるのであれば、原則の法定労働時間である週40時間を基に労働時間と休日の計算を行うことをお勧めします。

罰則について


最後に年間休日における罰則についてお話ししたいと思います。

労働基準法には、各規定に違反した場合の罰則規定が定められています。

冒頭でも書きましたが、労働基準法では、少なくとも1週間に1日又は4週間に4日休日を与えることを規定しています。
 
 
もし、この規定に反した場合には、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金の罰則規定が定められています。

結構厳しいです。
 
 
ただし、これは、会社が、労働者に1週間に1日又は4週間に4日休日を与えなかった場合が、法律違反となるのであって、与えてはいたが、結果的に休日が取れなかった場合には、36協定を届出していれば、法律違反とはなりません。

つまり、労働者との労働契約の内容が、2週間に1日しか与えないような内容で、最初から1週間に1日又は4週間に4日休日を与えないで労働させる場合に法律違反となると言えます。
 
 
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まとめ


休日は、労働者にとって重要な労働条件の1つです。

休日は、単に休日だけの問題だけでなく労働時間、割増賃金といった、重要な労働問題にも密接に関係してきます。
 
 
そのため、大きな労働トラブルに発展してしまう可能性が高い問題と言えます。

ですから、休日の計算方法の概要については、正しく理解することが重要となってきますので、是非、今後のご参考になさって下さい。
 
 
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社会保険労務士 松本 容昌
 


 

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