労災保険料は、基本的には労働者に支払った賃金額を基に算出されます。
ところで、労災保険料については、多くの経営者の方が、誤解しているところがあります。
本ブログでは、労災保険料の仕組みについてわかりやすく解説していきます。
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労働保険料は、支払賃金総額によって決まります
ご存知のように、従業員を1人でも雇用した場合には、事業主は、労災保険に加入しなければなりません。
労災保険料は、従業員に対して支払った1年間の給料総額(賞与等も含みます)に各事業種毎に定められた保険料率を乗じて算出します。
ところで、ご質問にもありますように、自動車保険等の場合、事故の有無によって翌年の保険料が変動します。
労災保険もイメージ的には自動車保険と似たようなところがありますので、労災事故が無ければ、翌年の労災保険料を下げて欲しい、という気持ちになります。
確かに、労災事故を頻繁に起こす会社と、全く事故を起こさない会社との労災保険料が同じというのも公平さに欠けるところがあります。
ですから、労災保険の場合も、労災事故の有無によって、翌年以降の労災保険料に反映させる制度があります。
これを「メリット制」と呼びます。
ちなみに、メリット制は、自動車保険のように事故の件数によって、翌年以降の保険料が決まるのではなく、労災保険から支払われた補償額によって翌年以降の労災保険料が、決定されます。
ところで、このメリット制ですが、全ての事業所に適用されるわけではありません。
ここは少し複雑なので、詳細についての説明は、割愛させていただきますが、年間に支払われた補償額が、翌年の以降の労災保険料に純粋に反映するのは、従業員数が、100人以上の事業場です。
そして、従業員数が、20人以上100人未満の事業場の場合には、年間に支払われた補償額が、一定額を超えた場合に、翌年以降の労災保険料に反映されます。
そして、従業員数が、20人未満の事業場の場合は、メリット制は、適用されません。
つまり、どんなに長期間、労災事故が発生しなくても、逆に、どんなに労災保険から補償が支給されても、翌年以降の労災保険料に影響することはないのです。
これを「得と考える」か「損と考える」かは、人それぞれでしょうが、従業員数が、20人未満の事業場の場合には、「労災保険を使っても、労災保険料は、上がらない」という事を覚えておいていただきたいと思います。
労働保険料に対する誤解が「労災隠し」に繋がっている側面があります
と言うのは、従業員数が20人未満の事業場の事業主の方でも、「労災保険を使うと翌年以降の労災保険料が上がってしまう」と誤解されている方が多いのです。
ただ、誤解しているだけなら、まだ良いのですが、この誤解が、「労災隠し」に繋がってしまう場合があります。
ご存知のように、業務中の怪我等では、健康保険を使うことはできません。
また、労災事故により、従業員が休業した場合には、労働基準監督署に、事故が起こった事実を届出る、死傷病報告書を提出する必要が法律で定められています。
労災事故による負傷にも関わらず、従業員に健康保険で治療を受けさせたり、労働基準監督署の、死傷病報告書を提出しなかったりすること、つまり、「労災隠し」は、犯罪となります。
繰返しになりますが、「労災保険を使うと、労災保険料が、上がってしまう」という盲目的な誤解が、「労災隠し」を生んでいる側面もありますので、ご注意下さい。
なお、メリット制の判断基準となる従業員数ですが、これは、月の平均従業員数を用います。
具体的には各月の従業員数の合計を12ヶ月で割って算出します。
例えば、4月から10月まで各月5人で、11月から翌年の3月までが各月7人とすると、合計で70人となりますので、これを12で割ると、5.8人となります。
小数点以下は、切り捨てなりますので、月の平均従業員数は、5人となります。
ちなみに、各月の従業員数の合計を12ヶ月で割って算出して得た数が、例えば、0.8人といった、1人未満になった場合には、1人とします。
なお、建設業等の場合には、メリット制は、また別の計算方法が用いられますが、ここでは割愛させていただきます。
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社会保険労務士 松本 容昌
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