労災保険は、労働者が業務上の災害等により怪我や病気になった場合の治療費や休業した場合に休業補償等を受ける事ができる制度です。
労災保険は、事業経営を行う上でも非常に重要な制度と言えます。
本ブログでは、労災保険制度について、わかりやすく解説していきます。
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労災保険は、全ての労働者が対象です
経営者の方が、事業を始め従業員を雇用するようになった場合に、関係してくる保険制度として、大きく4つあります。
雇用保険、健康保険、厚生年金保険、そして今回お話する労災保険です。
実は、労災保険は他の保険制度と1つ決定的に違う点があります。
労災保険以外の保険制度は、加入するあたり、加入できる労働者について要件が定められています。
例えば、雇用保険に加入できる労働者は、1週間で20時間以上労働し、31日以上雇用予定がある労働者です。
また、健康保険や厚生年金保険は、目安として1週間で30時間以上労働する場合に加入できます。(正確には1週30時間と定められてはいないのですが、目安として1週30時間以上とさせていただきます)
健康保険や厚生年金保険は、法人であれば対象となる者が1人でもいれば業種問わず強制加入となりますが、個人事業主の場合は、労働者数が常時5人未満であれば、加入する必要はありません。
つまり、雇用保険や健康保険、厚生年金保険は対象となる労働者がいなければ、加入する必要はなく、また健康保険や厚生年金保険は、個人事業主のであれば加入する必要が無い場合があります。
それに対して労災保険は、加入すべき労働者について、一切制限を設けていません。
ですから、たとえ、1週間に1時間しか労働しないアルバイト従業員であっても労災保険の対象となります。
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労災保険は、業種、会社規模を問いません
また、業種についても農業、水産業等ごくわずかの例外を除いて、ほぼ全ての業種が対象となり、また法人、個人事業の企業形態も問いません。
つまり、農業、水産業等以外のすべての企業は、たとえアルバイト従業員1名でも雇用する事となったら、必ず労災保険に加入しなければならないのです。
実際、企業の中には、「うちは零細企業だから」と言って、労災保険に加入していない企業も現実には多く存在します。
しかし、零細企業でも大企業であっても、アルバイト従業員を1名しか雇用していない企業も、従業員を何百人、何千人も雇用している企業も従業員を雇用する限り、労災保険に加入しなければならないのは全く同じです。
従業員を雇用したら、必ず労災保険に加入しなければならない、という事をご理解いただきたいと思います。
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労災保険は、他の保険制度とは違う点があります
繰り返しになりますが、正社員に限らずパートタイマー、アルバイトであっても従業員を雇用したら労災保険に必ず加入する必要があります。
しかし、実際には経済的等の理由で未加入の企業も多々あるのも現実です。
では、もし、労災保険に加入しなかった場合には、どのようなリスクが発生してしまうのでしょうか?
ここで非常に重要なポイントは、労災保険は通常の保険制度とは大きく違う点があるのです!
例えば、通常の保険であれば保険に加入していなければ、保険料を負担する必要が無い代わりに仮に事故があっても保険給付を受ける事はできません。
これは、極々当たり前の事ですよね。
国の制度である雇用保険や健康保険も同じです。
もちろん、一定の要件を満たしている場合には、加入が法的に義務となりますが、仮に未加入の状態であれば一切の保険給付を受ける事ができません。
しかし、実は、労災保険はその点が違っているのです。
労災保険は労働者保護を目的としているため、仮に勤務先の企業が、労災保険に加入していなくても、労災事故により負傷した労働者は、労災保険の給付を受ける事ができます。
何かおかしな感じがしますが、労働者保護の観点からそのような取り扱いがされています。
ところで、労災保険も保険であるため、当然加入すれば保険料が発生します。
となると、労災保険の加入の有無に関らず保険給付を受ける事ができるとなると、正規に保険料を支払っている企業との間で不公平が生じてしまいます。
そのため、当然労災保険に未加入の企業で労災事故で従業員が保険給付を受けた場合に、その企業にペナルティが与えられます。
労災保険の保険料は、基本的には業種による保険料率と従業員に支払う給料を基に決められます。
決められた保険料を支払えば、たとえ保険給付の額がいくらになっても、保険料以上の負担を強いられる事はありません。
しかし、労災保険に未加入で保険給付を受けた場合には、支払われた保険給付の額の一定割合の額を負担しなければならなくなります。
労災保険未加入のペナルティは莫大な額になることも・・・
例えば、年間の保険料が5万円の場合で、労災保険に加入していれば、たとえ保険給付を300万円受けても、5万円の保険料を納めていれば、それ以上の負担はありません。
しかし、労災保険に未加入であった場合には、300万円の最大で100%の300万円が企業に請求されてしまうのです。
負担の割合は、悪質さや状況等によって決められますが、仮に30%としても90万円となってしまいます。
わずか5万円の保険料を惜しんでしまうと、とんでもない負担を強いられる事態が起こってしまうかもしれないのです。
つまり、経済的な理由で労災保険に加入しないという事は、本当に目先の些細な事に過ぎないのです。
労災保険に加入しないという事は、本当に大きなリスクを負ってしまうことなのです。
しかも法律で定められていることなのです。
労災保険は加入しないならしないで済む、という制度ではないのです。
是非、この点をご理解いただきたいと思います。
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社会保険労務士 松本 容昌
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