Q139.雇用保険の加入手続きを忘れていた社員がいるのですが・・・。

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【質問】
 
先日、保険関係の書類を整理していたら、雇用保険の加入手続きを忘れている社員が、1名いることが判明しました。その社員は、1年半前ほどに入社した社員ですが、いまからでも加入手続きはできるのでしょうか?
 
【回答】
 
入社からの雇用実績がわかる出勤簿、賃金台帳等を添付すれば、遡及加入することは可能です。
 
【解説】
 

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1週間の労働時間が、20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある労働者を雇用した場合には、雇用保険に加入させなければなりません。

加入手続期限としては、加入日が属する月の翌月10日までとされています。

つまり、雇用保険の加入要件を満たしている労働者を8月10日に雇用した場合には、翌9月10日までに加入手続きを取る必要があります。
 
 
ところで、健康保険に加入する場合には、保険証が発行されます。

労働者も医療機関にかかるには保険証が必要なことがわかっているため、万一、会社が、健康保険の加入手続きを忘れていても、労働者からの申出により、未加入の期間が比較的短期間で済みます。
 
 
しかし、雇用保険においても、一応被保険者証なるものが発行されるのですが、雇用保険の場合、在職中に雇用保険の制度を利用することがほとんどないため、労働者側も雇用保険の加入について、あまり意識しないところがあります。

その結果、ご質問のように、未加入期間が長期となってしまう場合があります。
 
 
さて、雇用保険の加入手続きについては、先程、お話しましたように加入日の属する月の翌月10日までに加入手続きをしなければならないと規定されていますが、実際には、それ以降であっても加入の手続きをすることが可能です。

ただ、その場合には、賃金台帳や出勤簿といった加入日より雇用されていたことを証明する書類の添付が必要となります。
 
 
では、加入手続きを溯って行う場合に、いつまで溯ることができるのでしょうか?
 

これに関しては、法律の規定があります。

と言っても、遡及できる期間が定められているのではなく、保険料を徴収できる期間が規定されています。

法律では、国が、雇用保険料を徴収できる期間は、原則2年間とされています
ただし、雇用保険料が給与から天引きされていたことが書面により確認できる場合には、2年を超えた期間についても、雇用保険に遡って加入できます。
 
 
逆に言えば、雇用保険料が給与から天引きされていたことが書面により確認できない労働者は、2年以上溯って保険料を納めたいと言っても、国は受取ってもらえません。
 
 
さて、雇用保険の加入を溯って行う場合に注意すべき点があります。

雇用保険も保険制度の1つであるため、過去に溯って加入すれば、溯った分の保険料が必要となります。
 
 
ところで、ご存知のように雇用保険の保険料の納付は、毎年6月の年度更新によって行われます。

つまり、雇用保険は、手続き業務と保険料納付業務は、全くの別となります。

実際、雇用保険の遡及加入の手続き時には、保険料の納付は必要ありません。
 


ここで雇用保険料の納付の仕組みについて、簡単にご説明したいと思います。

雇用保険料は、労災保険料と一緒に労働保険料として納付します。

労働保険は、4月から翌3月までの1年間の保険料を見込みで支払い(概算保険料)、翌年、保険料が確定(確定保険料)した時点で、概算保険料との過不足を計算します。

雇用保険料の納付は、このような仕組みになっているため、遡及する期間が、既に保険料の額が確定している期間まで及ぶ場合は、確定保険料を訂正する必要が出てきます。

例えば、平成30年8月の時点で、平成29年9月に溯って雇用保険に加入すると、当然、平成29年9月以降の保険料を追加で支払う必要があります。
 
 
しかし、平成29年9月から平成30年3月分については、保険料は、既に確定しているから、これを訂正する必要があります。

社会保険の場合には、遡及加入した場合、追加の保険料は、国から自動的に請求がきますが、雇用保険の場合には、経営者に自身が、確定保険料の訂正を行い納付しなければなりません。
 
 
ちなみに、平成30年4月から平成30年8月分については、まだ保険料が確定していなので、来年、確定保険保険料を計算する際に、遡及加入した労働者分の賃金も含めて確定保険料を計算すれば良いこととなります。

いずれにしても、雇用保険の加入を溯って行う場合には、加入の手続きを行う以外に、保険料の訂正業務も行う必要がある場合あるのでご注意下さい。
 
 
最後に雇用保険加入の手続き忘れと失業等給付との関係についてご説明したいと思います。
 

雇用保険の最も重要な目的である失業等給付は、離職した労働者に対して生活するための給付を一定期間行うものです。

失業等給付は、雇用保険の加入期間に応じて支給日数が決められます。
 
 
例えば、自己都合退職の場合、雇用保険への加入期間が、10年未満の場合には90日、10年以上20年未満の場合には120日なります。

もし、雇用保険への加入手続きを2年以上忘れていた労働者が退職する場合で、入社後10年以上勤務している場合には、遡及加入しても雇用保険への加入期間が10年以上とならない場合があります。

このような場合には、正しく雇用保険の手続きがされていれば、120日分の失業等給付を受け取ることができたにも関わらず、90日分しか受取れないこととなり、大きなトラブルに発展してしまう可能性があります。
 
 
先にも書きましたが、社会保険の場合には、加入手続きを忘れた場合、保険証が届かないため、労働者から申し出がある場合がほとんどなので、未加入期間が、短期間で済むのですが、雇用保険の場合には、在職中に労働者が雇用保険の制度を利用するケースがほとんどないため、労働者から雇用保険加入についての問い合わせがくることは、ほとんど稀と言えます。

しかし、雇用保険の方が、トラブルが起こりやすいと言えます。

ですから、雇用保険の加入手続きは、確実に行うことが重要と言えます。
 

とは言っても、社会保険の場合には、保険証の関係等で、ある程度の緊急性が求められますが、雇用保険の場合には、手続きの期限が翌月の10日までと、ある程度余裕があるため、逆に手続き忘れに繋がってしまうところがあります。

手続き漏れ対策としては、年に一度、加入者の台帳を取ることをお勧めします。

ハローワークに依頼すれば、現時点で雇用保険に加入している労働者の一覧表を発行してしてくれます。
 
 
申請書は、ハローワークに置いてあり、会社印等を持参すれば、簡単に取ることができます。

年に一度、被保険者台帳で現状を確認すれば、万一、手続き漏れがあっても、未加入期間が、1年以内となりますので、先にお話しした失業等給付のトラブルは、まず発生しないと言えますので、是非、ご参考になさって下さい。
 
 
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社会保険労務士 松本 容昌
 


 

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