Q7.代理人と称する人物が、休業中の社員の給料を受取りにきたのですが・・・。

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【質問】
 
「当社は、給料を直接現金で支給しています。先日、休業中の従業員の代理人と称する人物が、給料を替わりに受取りにきました。委任状も持っていたので、その人物に給料を渡し、領収書も受領したのですが、問題は、無かったでしょうか?」
【回答】
 
「たとえ委任状を持っていても、絶対に代理人に給料を渡さないで下さい。給料は、直接労働者本人に渡さなければなりません。」
 
【解説】
 

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給料は、労働者にとって最も重要な労働条件の1つでですから、労働基準法では、給料に関していくつか法律で制限しています。

その中の1つとして、法律用語で「賃金の直接払い」があります。

これは、給料は、必ず労働者本人に支払わなければならない、ということです。

逆に言えば、労働者本人以外に支払っても、それは給料を支払ったこととはならないのです。
 
 
では、ご質問のように代理人と称する者が、労働者本人の委任状を持っていたらどうでしょう?

結論から言いますと、たとえ、代理人が委任状を持っていても、労働基準法で定める、「直接払い」には、該当しません。
 
ですから、代理人と称する人物に給料を支払った後、労働者本人が、給料の支払いを求めてきたら、会社は、労働者に給料を再度支払わなければなりません。
 
 
そして、この「直接払い」は、未成年者にも適用されます。

つまり、未成年である労働者の親などの親権者に給料を支払う場合でも、労働基準法違反となります。

ですから、給料は、必ず労働者本人に支払って下さい。
 


ところで、労働基準法では、代理人や親権者であっても、それらの者に給料を支払うことは、労働基準法違反としていますが、労働者の「使者」に支払うことは認めています。

「使者」と「代理人」との違いは、少し難しいのですが、代理人は、本人に代わって意思決定をし、代理行為をするのですが、使者は、意思決定の自由はなく、単に本人の意思を伝えるに過ぎません。
 
今回の給料で言えば、例えば、病気のご主人に代わって、奥さんが給料を受取りにきた、といったイメージです。

ところで、ここからは、個人的な考えでもありますが、確かに、法律上は、使者に給料を渡しても、労働者本人に給料を払った,と見なされます。
 
 
しかし、「代理人」と「使者」の区別の判断は、非常に難しいと言えます。

配偶者や親であれば、「必ず使者か?」と言えば、必ずしもそうとは言い切れません。
 
配偶者や親であっても代理人になることはあり得ます。

たとえ、配偶者や親であっても、労働者との間で何らかの債務が存在する場合もあります。
 

しかし、会社サイドからでは、給料を受取りに来た、配偶者が、使者なのか、代理人なのかは、正確に判断が付かないのが現状です。
 
ですから、よほど会社でもその労働者の家庭状況がわかっている場合には別ですが、給料は、たとえ配偶者や親でも渡さない方が無難です。
 
 
ところで、このような問題は、給料を直接、現金で支給している場合に起こると言えます。
 
つまり、給料の支給を銀行等にの振込にすればこのような問題は防げることとなります。
 
ただし、給料を、銀行等への振込で支給する場合、労働者の同意が必要となってくるのでご注意下さい。
 
 
いずれにしても、もし、現金で給料を支給している場合で、配偶者や親が給料を受取りにきたら、安易に渡さず、本人に連絡を付けて、口座番号等を確認して、銀行等の本人口座へ振込むか、もし、本人と連絡が付かない場合は、裁判所へ供託するのが無難でしょう。
 
 
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社会保険労務士 松本 容昌
 


 

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