Q132.退職時の有給休暇は買取した方がメリットがありますか・・・?

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【質問】
 
「退職を予定している従業員から、残っている有給休暇を買取って欲しいと言われました、もし、買取してくれないなら、有給休暇を消化してから退職するとのことです。有給休暇を買取しても、消化して退職しても、当社としては、支払う金額は同じなので、早く退職してもらえば、社会保険料の負担も減りますので、買取したいと考えています。
ただ、有給休暇の買取は違法、と聞いているのですが、退職時の有給休暇の買取も違法なのでしょうか?」
 
【回答】
 
「有給休暇の買取については、禁止されていますが、退職時については、例外的に買取しても差支えないとされています。」
 
【解説】
 

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有給休暇の買取に関しては、法律で禁止されています。

有給休暇の本来の目的は、労働者に対して、心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を保障するものであるため、有給休暇の買取を認めてしまうと、「お金をもらえるなら、休まないで働く」となってしまい、有給休暇の本来の目的を逸脱してしまうため、有給休暇の買取は禁止されています。
 
 
しかし、退職時においては、労働者は、引継ぎ等の関係で、有給休暇を消化しきれずに、退職せざる得ない状況も考えられます。

退職後に有給休暇を取得することはできないので、その分を買取したとしても、有給休暇の本来の目的を阻害するわけではないので、退職時に限り、例外的に有給休暇の買取を行っても差支えないとされています。
 
 
ところで、この規定は、あくまで「有給休暇を買取しても差支えない」とされているため、事業主に有給休暇の買取りを義務付けているものではありません。

ですから、事業主は、労働者からの有給休暇の買取に必ずしも応じる必要はありません。
 
 
しかし、ご質問にもあるように、もし、事業主が、有給休暇の買取に応じなければ、労働者は、有給休暇を取得してから退職する、という選択をするでしょうから、労働者に支払う金銭は同じとなります。
 

となると、有給休暇の買取に応じた方が、退職日が、早まりますので、ご質問にもあるように、社会保険料の負担が減りますので、企業にとっても退職時の有給休暇の買取は、メリットがあると言えます。
 
 
ところで、事業主の方には、有給休暇の申請に対して、通常の業務に支障が出る場合、有給休暇の時期を変更できる有給休暇の時季変更権があります。
 
では、退職時において有給休暇の買取に応じなかったために、労働者が有給休暇を消化して退職する旨の申し出があった場合に、事業主は、時季変更権を行使できるでしょうか?

この場合、退職の時期が決まっているため、有給休暇の時期を変更する余地がありません。
 
ですから、退職時については、有給休暇の時季変更権は、行使できないこととなります。


つまり、退職時に労働者が有給休暇の買取の請求か、有給休暇を消化しての退職かを請求してきた場合には、事業主としてはどちらかに応じなければならない、ということとなります。
 
 
では、最後に退職時の有給休暇の買取に関して1つ事例をお話したいと思います。
 

3月31日に退職予定で、退職日までの間に出勤すべき日が7日で、有給休暇の残日数が15日とします。
 
 
ところで、有給休暇とは、賃金を受取る権利を有しながら、労働を免除されることを言います。

つまり、有給休暇は、労働すべき日にしか取得できないこととなります。逆に言えば、公休日等の休日には有給休暇を取得することは、出来ないこととなります。

となると、先程の例では、有給休暇の残日数が15日であっても、労働すべき日は7日しかありません。8日間は、消化することが不可能となります。

ここで、労働者は、8日間分を買取してもらいたい、と思われるかと思います。

しかし、先にご説明しましたように、使用者は、退職時の有給休暇については、買取しても差支えない、とされているだけであって、買取の義務はありません。
 
 
もし、会社側が、8日間分の有給休暇の買取りに応じなければ、結果的に、8日間分の有給休暇は、退職時に消滅してしまうこととなります。

有給休暇の残日数と退職日までの出勤日数との関係で、上記のような事が起こる可能性も考えられます。
 
 
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社会保険労務士 松本 容昌
 


 

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