少し前になりますが、某大手牛丼チェーン店の過酷な労働実態がマスコミで報道されました。
ご存知のように、その某大手牛丼チェーン店では、労働者不足により数多くの店舗は休業に追い込まれてしまいました。
それ以外にも、不適正な労務管理でマスコミ等で報道される企業は後を絶ちません。
本ブログでは、適正な労務管理の重要性について今一度考えてみたいと思います。
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労務管理に対して意識が希薄になってしまう・・・
昨今、「ブラック企業」という言葉が象徴するように、過重労働、違法労働を行わせる企業が社会問題となっています。
現在において、過重労働や、違法労働に関して世間は非常に大きな関心を持っていると言えます。
ところで、では、何故、過重労働や違法労働が行われるのでしょうか?
先に書いた某大手牛丼チェーン店の代表者の会見では、「労務管理に対する意識が希薄であった」ような旨の事を言っていますが、私は、まさに過重労働や違反労働が起こる最たる原因は、経営者の労務管理に関する意識の希薄さにあると言えます。
では、何故、経営者は、労務管理に対して意識が希薄となるのでしょうか?
確かに売上至上主義の視点から見れば、労務管理は、利益を生まないために、どうしても使用者にとっては二の次になってしまうと言えます。
ただ、私は、この点に関して以前から思っていたのですが、経営者が労務管理に対して意識が希薄になる原因は、単に売上至上主義では片づけられない、もっと根本的な原因があるように思えます。
例えば、車の免許を取る時に、運転技術とは別に、数多くの交通ルールを学びます。
その結果、私達は、守るべき法則があることを知ることとなります。
そして、違反行為をした場合には、罰則が科せられることも知っています。
しかし、経営において極端な話し、労働法関係の法律を全く知らなくても労働者を雇用することはできてしまいます。
労働者を雇用するということは、労働契約を締結することであり、締結後は労働基準法他様々な法律の制限を受けます。
しかし、先に書いたように経営者は、労働法関係の法律を全く知らなくても、労働者に給料さえ支払っていれば、経営を続けることができてしまいます。
つまり、労働者を雇用して事業経営を始める時点から、法律を知らなくても事業経営を始めることができてしまうのですから、労務管理に関して意識が希薄になるのは当然とも言えます。
もちろん、多くの経営者の方は、法律遵守する方向へ移行していくのですが、一部の経営者は、何年たっても意識が希薄なまま経営を続けることとなってしまいます。
ですから、空想論ですが、経営者が事業を始める時にもっと労務管理に対する意識が高まるような制度であれば、過重労働や違法労働は、減少するのではないかと常々思います。
何故、経営者は労務管理に対して意識が低くなりがちなのか?
事業経営を行っていくには、労働法関連以外でも様々な法律の規制を受けます。
その代表的なものが税制関連でしょう。
税制、つまり経理関係も事業経営において欠かすことができません。
しかし、経営者が、起業する時に、労動法関連の法律とは違って、税制関連の法律に対して精通していることはあるでしょうか?
残念ながら、多くの経営者は、起業する時には、労働法関連の法律同様、税制関連の法律についてもほとんど知らないで起業する方がほとんどかと思います。
しかし、私は、経営者の方は、税制と労務管理に対しては、明らかに意識の高さが違うと思います。
起業時には、税制関連の法律も労務管理についての法律も同じようにほとんど知らないのに、税制関連についての方が圧倒的に経営者の意識が高いと言えます。
それは、どんな経営者の方でも年に1回、税金を納めなければならないことは知っているかと思います。
そのため、税金に対して正しい知識が必要である、ということを否応なし感じるのではないでしょうか?
ですから、どんな経営者も税制については、自分で勉強するか税理士に税制業務を委託すると言えます。
それに対して労務管理は、労働保険(労災保険と雇用保険の総称です)は、年に1度、保険料の計算の必要がありますが、労働保険料の場合、賃金総額によって計算されるので、求められる知識のレベルは、税金の申告と比べれば、はるかに少ないと言えます。
また、そもそも労働者を雇用したら労災保険に加入しなければならないということ自体を知らない経営者の方もかなりの数いるのが現状です。
私は、経営者の方が労務管理に対して意識が希薄になりがちな大きな原因は、ここにあるのではないかと思います。
つまり、労務管理には、税制のように毎年申告をして、何年か一度に税務署の調査があるというような、経営者の方に法律知識の必要性を、強制的に感じさせる制度が無いため、どうしても、労務管理に対して意識が希薄となってしまうのではないかと常々思っています。
ですから、税務署の調査のように、労務管理においても何年かに一度、労務管理の実態について調査を受けることが一般化してくれば、もっと労務管理に対しての意識が高まってくるのではないでしょうか?と個人的には思っています。
ところで、事業経営において実際に会社を動かしているのは、「人」です。
「人」がいなければ、経営は成り立たなくなってしまいます。
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「人」がいなければ経営は成り立たない
労務管理の重要性について書いてきましたが、某大手牛丼チェーン店に話を戻しますが、この問題を見ていると、企業は、「人」がいて、初めて成り立っている、ということを改めて感じさせられました。
つまり、どんな理想論を掲げても、「人」がいなければ、経営は成り立たないのです。
しかし、これは誰が考えてもわかることです。
では、何故、某大手牛丼チェーンは、数多くの店舗が休業に追い込まれてしまったのでしょうか?
結局は、労働者がいなくなること自体を考えてもいなかったのではないのでしょうか?と思います。
以前から、深夜を1人の労働者でまかなうシステムに大いに疑問を感じました。
誰が考えても、防犯上のリスクが高いということはわかっていたはずです。
こんな無謀な制度を導入すること自体が、異常です。
でも、経営者からしてみれば、「人件費を削減しなければ経営が成り立たない」と言うでしょう。
確かに、その通りです。
でも、この恐ろしくリスクが高いシステムが成り立つには、労働者がいるということが前提となっています。
これは「会社が潰れれば、労働者も困るだろう」という、まさに上から目線の感覚に私は思えます。
でも、一番困るのは経営者ですよね。
ですから、本来は、最も負担を強いられるのは経営者のはずです。
でも、それが堂々と労働者に負担が強いられている。
何故なら、「労働者がいなくなることはありえない」という感覚があるからだと思います。
でも、実際に、労働者はいなくなってしまいました。
もちろん、労働者に謙る必要はありません。
しかし、企業にとって「人」がいかに重要であるか、そして、経営は、「人」がいなければ成り立たない、
という誰もが頭ではわかっているこの事実を、今一度、真剣に考える必要があるのではないでしょうか?
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社会保険労務士 松本 容昌
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