本ブログでは、助成金と補助金との違いについてお話ししたいと思います。
助成金も補助金も国や地方公共団体、地方自治体等から支給される点では同じですが、いくつか違う点もあります。
助成金や補助金を上手に利用していく上で、それぞれの違いを正しく理解することは重要ことと言えます。
本ブログでは、助成金と補助金の違いについて解説してありますので、それぞれの違いが正しくご理解いただけるかと思います。
助成金と補助金の概要について
まず、助成金と補助金の概要についてお話ししたいと思います。
助成金は、主に厚生労働省で実施されていて、雇用機会の維持又は増大を図った会社に支給されます。
「雇用機会の維持又は増大を図る」とは、例えば、60歳以上の高齢労働者や母子家庭の母等といった就職困難者をハローワークを通じて雇用した場合には、雇用機会の増大に該当します。
また、パートタイマー等の有期雇用労働者を正社員へ転換した場合には、雇用機会の維持に該当するため、支給の対象となってきます。
それに対して補助金は、主に経済産業省や地方自治体で取扱われています。
補助金は、事業経営を行うための設備投資費、販路を開拓・拡大するための広告費やホームページ作成費用、新商品開発のための研究費など、事業活性化を図るために不足している資金を補う目的で支給されます。
助成金と補助金の共通点
助成金も補助金も融資制度とは違うため、返済する必要がありません。
これは、助成金、補助金の大きな魅力の1つです。
また、使用目的も制限されていません。
これは、どういうことかと言いますと、助成金も補助金もその支給される目的は決まっているのですが、実際に支給された助成金や補助金は、どのような用途で使用しても問題ありません。
例えば、60歳以上高年齢労働者をハローワークを通じて雇用して支給された助成金であっても、必ずしも助成金の対象となった高年齢労働者のために使用する必要はなく、どのような目的で使用しても良いのです。
また、支給時期ですが、助成金も補助金も同じ後払いとなります。
例えば、先の例の就職困難者を60歳以上高年齢労働者をハローワークを通じて雇用する助成金では、対象となる労働者を雇用した時点では支給されるのではなく、雇用後半年を経過して支給申請することができます。
補助金も同じで、例えば、ホームページ作成の補助金の場合、実際に作成費を支払った後で、補助金が支給されることとなります。
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助成金と補助金の違い
助成金と補助金との決定的な違いは、助成金は支給要件を満たしていて必要な書類を提出すれば基本的には必ず受給できるのに対して、補助金の場合には、ほとんどの場合が公募で審査が通った場合にのみ支給されます。
つまり、補助金は、要件を満たしていて必要な書類を揃えても必ずしも受給できるわけではないのです。
しかも、補助金は、通年受付けをしているわけではなく、受付期間が決まっていて、受付期間が過ぎてしまうと応募することができなくなってしまいます。
それに対して、助成金は、制度が廃止されなければ、いつでも申請をすることができます。
この点も助成金と補助金との大きな違いと言えます。
助成金と補助金 どちらが利用しやすい?
このように助成金と補助金とではいくつかの違いがあります。
いつでも申請ができて要件を満たし、必要な書類を揃えれば必ず貰える助成金の方が利用しやすい?と思われるかもしれません。
しかし、必ずしもそうではありません。
助成金は、雇用保険制度の一環として行われているため、支給要件に一定の労働者の雇用が求められます。
助成金も補助金と同じように設備費用やホームページ作成費用に対するものもあるのですが、助成金の場合、設備を購入したりホームページを作成しただけでは、助成金を受給することはできず、一定の労働者の雇用が必要となっています。
つまり、一定の労働者の雇用ができなければ、どんなに設備やホームページに費用をかけても、助成金を受給することはできなくなってしまいます。
労働者の雇用は、経営者の意思だけではどうにもならないところがあります。
それに対して補助金の場合には、必ずしも助成金のように労働者の雇用は基本的には求められないので、その面では補助金の方が利用しやすいとも言えます。
助成金、補助金を上手に活用するためのポイントとは?
助成金、補助金には様々な支給要件が定められていますので、助成金、補助金を利用するには、それぞれの支給要件を満たし必要な書類を揃えることが、当然ですが必要となります。
しかし、助成金、補助金を上手に利用するには、それ以外にも大局的な観点からのポイントがあります。
これまでお話してきましたように、助成金と補助金は、制度の上で共通点も多いのですが、根本的には目的が違います。
助成金は、その目的が雇用の安定が主眼であるのに対して、補助金は、企業の発展、売上増加にあると言えます。
そのため、利用する上でのポイントが、当然違います。
助成金を利用するポイントは、適正な労務管理です。
もちろん、各助成金は、それぞれに様々な支給の要件が定められていますが、それ以前に適正な労務管理を行っている必要があります。
適正な労務管理とは、賃金台帳、出勤簿等の整備、割増賃金等の適正な支払いなどがあります。
ですから、助成金を活用するには、日頃から適正に労務管理を行っている必要があります。
それに対して、補助金は、売上が増加による企業成長に主眼が置かれているため、補助金の対象となる設備やサービスが、いかに売上増加に繋がり、企業が成長していくかを明確にする必要あります。
つまり、補助金の場合は、いかに審査に通る可能性が高い事業計画書を作成するが、最も重要となってきます。
補助金は、公示されてから募集期間が決して長くないため、募集が開始されてから、事業計画書を作成しても、稚拙な内容のものしか作成できないこととなってしまいますので、日頃から事業計画に対して関心を持っておくこと必要があります。
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創業と助成金、補助金との関係
創業を検討されている方から、「助成金や補助金を上手に使って創業したい」といったご相談を受けます。
しかし、これまでお話ししてきましたように、助成金が支給されるのは、創業後に労働者を一定期間雇用した後となります。
また、同じように補助金も、ホームページ作成後、設備等の購入事、費用を支払った後の支給となります。
従って、助成金も補助金も融資とは違うため、返済する必要はありませんが、創業時の創業資金とはなりえないのです。
ですから、創業する場合には、予め創業資金を準備するなど、計画的に準備をすることが大切です。
助成金、補助金の情報は何処で入手できる?
助成金や補助金をいかに利用できるかの鍵は、まさに情報量であると言えます。
日本は、申請主義であるため、どんなに要件を満たしていても、申請しなければ受給することはできません。
つまり、助成金や補助金の存在そのものを知らなければ、絶対に利用することはできません。
ですから、助成金や補助金についての常に最新の情報を入手することは、助成金、補助金を利用する上で、非常に重要なことです。
ここでは、助成金、補助金に関するサイトをご紹介します。
助成金や補助金は、制度の新設や廃止、支給要件の変更等が激しいので、これらのサイトを定期的にチェックすれば、活用できる機会も増えるかと思います。
◆助成金関係
>>事業主の方のための雇用関係助成金(厚生労働省)
>>独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
◆補助金関係
>>経済産業省
>>日本商工会議所
>>中小企業庁
>>公益財団法人笹川スポーツ財団
会計検査について
ここでは、会計検査についてお話ししたいと思います。
会計検査?
聞きなれない言葉かもしれませんが、実は、助成金、補助金を利用する上で、是非、覚えておいていただきたいと思います。
助成金、補助金を利用する場合、必要書類を添付して支給申請を取扱行政官庁に提出します。
その後、各行政官庁が、提出された書類等を審査して、問題が無ければ、支給決定を行い、ここでようやく、助成金、補助金が、会社に支給されることとなります。
多くの経営者の方は、助成金、補助金が支給されれば、それで終わりと思われていますが、実は、そうではありません。
助成金、補助金を受給した企業は、受給後一定期間(通常は、5年間)、会計検査院の会計検査に応じる義務を負うこととなります。
会計検査では、助成金、補助金の支給申請時に提出した書類を再度提出し、検査を受けることとなります。
会計検査は、全ての企業が対象となるわけではなく、ランダムに選ばれます。
会計検査で注意すべき点は、支給申請時に提出した書類と同じものを提出しなければなりません。
ですから、支給申請時に提出した書類は、一定期間、保存しておく必要があります。
会計検査で、注意すべき点は、申請書類を一定期間保存しておくことはもちろんですが、申請時の提出書類を適正にすることです。
支給申請時に目先の審査だけを通すために、帳票類を改ざんするケースが実際には発生しています。
会計検査は、支給申請時の審査とは違った視点で行われます。
支給申請時の審査は、助成金、補助金の要件に適合しているか否かの視点で、審査されますが、会計検査の場合には、書類そのものの整合性等も検査されます。
そのため、帳票類を改ざん等して、仮に支給申請の審査を通ったとしても、会計検査で、不正が発見されるケースも実際起こっています。
ですから、助成金、補助金の支給申請を行う場合には、適正な書類を提出することが必要となってきます。
目的を正しく理解することが必要です
最後に、助成金と補助金について是非、ご理解していただきたいことがあります。
助成金や補助金は、返済義務が無く使用目的も問われないため、経営者にとっては、魅力な制度です。
しかし、助成金や補助金は、それを受給するのが目的ではなく、結果として受給できるものです。
これは、どういうことかと言いますと、例えば、高年齢者等の就職困難者を雇用すると助成金を受給できる場合があります。
これは、就職困難者を雇用した結果として、助成金を受給できるのであって、助成金を受給するために就職困難者を雇用するわけではありません。
補助金の場合には、あくまで要した費用の一部しか補助されないため、補助金をもらうために設備やサービスを購入する、ということは無いのですが、助成金には、例えば、以前あった制度ですが、介護離職を防止するために、社内研修等を行った場合に、助成金が支給される場合のように、費用をかけずに助成金を受給できる場合があります。
このような場合、助成金を受給するために、社内研修等を行う、と考えてしまいたくなりますが、あくまで制度の趣旨は、介護離職を防止するために、社内研修等を行い、その結果として助成金を支給する、というものです。
もちろん、制度自体に、行動喚起の意味合いがあるので、「助成金をもらえるのであれば、取り組んでも良いかな」と考えるのは、決して間違いではありません。
では、何故、このようなことをお話しするかと言いますと、あまりに「助成金ありき」で考えてしまうと、「助成金さえ受給できれば良い」となってしまい、例えば、社内研修を実際は行っていないのに、行ったようにみせかける等の不正に繋がってしまう可能性があるからです。
不正受給は、最悪、詐欺罪で刑事告訴されてしまう場合もあります。
ですから、助成金、補助金は、その制度の趣旨を正しく理解して利用することが絶対の条件となります。
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まとめ
今回は、助成金と補助金についてご説明させていただきました。
助成金と補助金は、その目的が元々違うため、「どちらが良い悪い」というものではありません。
その時々に合わせて上手に利用することが大切となってきます。
ただ、助成金も補助金も制度自体が非常に複雑なので、利用する際には、行政官庁又は専門家にご相談するようにして下さい。
社会保険労務士 松本 容昌
助成金無料相談について
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