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【質問】
「当社では、残業代を計算する時には、基本給だけでなく、各手当を含めた支給総額で計算しています。ところが、先日、業界紙に、家族手当や通勤手当は、残業代を計算する際に総額に含める必要はない、と書いてありましたが、本当でしょうか?」
【回答】
「基本的には、家族手当通勤手当等の一定の手当は、残業代を計算する際の総額に含める必要はないとされています。しかし、総額に含めにためには、一定の条件があります。」
【解説】
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「手当」については法律で特段の制約がありません。
従って、会社で「どのような手当を支払うか」「いくら手当を支払うか」といった事については、基本的には会社が自由に決めても問題ありません。
ただし、割増賃金との関係において注意すべき点があります。
時間外手当や深夜割増手当を計算する際には、1ヶ月に支払われた給料と1ヶ月の労働時間を基にその単価を出します。
例えば、1ヶ月に支払われた額が200,000円で1ヶ月の労働時間が172時間の場合、時間単価は200,000円÷172時間=1,163円となります。
この1,163円が時間外手当や深夜割増手当計算する際の計算基礎単価となります。この1,163円に割増率を乗じて時間外手当や深夜割増賃金を算出しますし。
ところで、割増基礎単価を算出する際に、1ヶ月に支払われる給料に算入しなくても良い手当があります。
具体的には家族手当、住宅手当、通勤手当、子女教育手当、別居手当などです。
例えば、基本給150,000円、家族手当10,000円、業績手当10,000円が1ヶ月に支払われた給料とすると、割増計算単価を算出する際には、基本給150,000円、業績手当10,000円の160,000円で計算すれば良いのです。
ただし、ここで注意が必要な点が1つあります。
家族手当や住宅手当、通勤手当を割増賃金を計算する際に算入しなくても良い条件として、例えば家族手当であれば、家族数に応じて手当は支払われる必要があります。
また、住宅手当に関しては、家賃や住宅ローンの額に応じて支給される必要があります。
通勤手当も同じ考えで、通勤距離、通勤手段等に応じて手当の額が定められる必要があります。
家族手当と称しても、家族数に関係なく一律に支払われる場合や住宅手当と称しても、家賃や住宅ローンの額に関係なく一律に支払われる場合は、割増賃金単価を計算する際には支払われる賃金に算入する必要があります。
つまり、割増賃金の額を低くするために、実態を伴わないのに名称だけ「家族手当」や「住宅手当」と称しても、それは認められないこととなります。
ところで、支払う手当の額については基本的には法律の制限を受けません。
従って、家族手当や住宅手当を家族数、家賃、住宅ローンの額等に関係なく一律に支払う事自体は全く問題がありません。
しかし、家族数、家賃、住宅ローンの額に関係なく、一律に家族手当や住宅手当を支払う場合には、その額も割増賃金の計算単価に算入する必要があります。
この点は多くの事業主の方が誤って認識している点で、労働基準監督署の調査で指摘を受けた場合には、時間外割増賃金の不足となってしまい、場合によっては多額な不足額の支払いを命じられる場合もあります。(法律では過去2年間分遡って徴収できます)
繰り返しになりますが、「家族手当」「住宅手当」「通勤手当」等を割増賃金の計算単価に算入しなくても良い場合は、家族数や家賃、住宅ローンの額通勤距離、通勤手段に応じてその額が決められている場合であって、名称だけ「家族手当」「住宅手当」「通勤手当」等として支払っても認められない、という事を是非ご理解下さい。
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社会保険労務士 松本 容昌
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