これまで助成金については、本ブログでも何回か取上げたことがありますが、助成金は、返済不要使用目的も問われないため、経営者には、非常に魅力的な制度と言えます。
しかし、多くの経営者の方々は、助成金について詳しく知らないために、ごく一部の企業にしか利用されていないのが現状と言えます。
助成金は、雇用保険に加入していれば、どの企業でも利用できる可能性があります。
また、法人だけでなく、個人事業主でも利用できます。
少しでも多くの経営者の方に助成金を活用していただければと思い、本ブログでは、私が経験した事例を基に助成金活用に役立つお話しをしたいと思います。
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助成金は、申請手順が非常に重要です
少し前のこととなりますが、あるクライアントさんから電話がありました。
「実は、現在、パートタイマーで雇用している従業員を、来月から社会保険に入れたいので、どんな書類を用意すれば良いでしょうか?」
「社会保険ですね。健康保険の扶養に入る方はいますか?もし、いないのでしたら、従業員の方の年金手帳と履歴書、労働条件変更通知書が、あれば大丈夫ですよ。」
「わかりました。準備できましたら、また連絡しますね。ありがとうございました。」
とクライアントさんは、電話を切ろうとしたので、私は、思わず「あっ、少し良いですか?社会保険に加入ということは、正社員になるのですか?」
「はい、時間的に余裕が出来たので、もう少し長く働きたい、と言ってきたので、うちとしても正社員として働いてもらういたい思ったものですから・・・。」
「それは良いことですね。ただ、その従業員の方は、雇用期間に定めを設けていましたよね。、以前、お話ししたことがあるのですが、雇用期間に定めがある従業員さんを正社員に転換すると助成金が出るのですが・・・」
「え~・・・?? そう言えば、先生、そんなことをおしゃっていましたね。今回のケースで助成金がもらえるんですか?」
「はい、条件的には該当すると思いますよ。」
「そうなんですか。ちなみに、いくらもらえるんですか?」
「はい、正社員に転換するのであれば、1人につき57万円です。」
「57万円ですか!」
「でも、先に計画書をハローワークに提出しなければならないんです。いつから社会保険に加入する予定ですか?」
「来年の1月6日からを考えているんですが・・・」
「この助成金は、正社員に転換する日より1ヶ月以上前までに計画書を提出しなければならないんです。今日が11月28日ですから、12月5日までですね。」
「間に合いますか?」
「はい、大丈夫ですよ。でも、もう少し連絡をいただくのが遅かったら駄目でしたね。」
こんなやり取りがあって、早速、計画書を作成し、3日後に計画書を無事ハローワークへ提出しました。
実は、これまで、これと似た経験を何度もしているのですが、毎回、思う事なのですが、「本当に助成金は、タイミングだな」と思ってしまいます。
助成金は、支給条件を満たしていることが最も重要ですが、どんなに支給条件を満たしていても手順を誤ってしまえば、助成金を受給することはできません。
今回のケースで言えば、クライアントさんが、従業員を正社員に転換する日である1月6日の1ヶ月前である12月5日までに計画書を提出しなければ、助成金の受給の機会を逸していたこととなります。(現在、計画書の提出期限は、転換日の前日までと緩和されています。)
冒頭にも書きましたが、助成金は、返済不要で使用目的も問わないため、経営者にとっては非常に魅力的な制度です。
にもかかわらず、ごく一部の企業にしか利用されていないのが、実情です。
ところで、私は、以前から思っていた企業が、助成金を活用するための大きなポイントが、まさに今回の事例に中にあると考えています。
そのポイントを考えると、逆に何故、一部の企業にしか助成金が、活用されていないのか?が見えてくるのではないかと考えます。
助成金を活用できる否かの大きなポイントが、タイミングであると言えます。
では、タイミングを掴むにはどうしたらいいのか?
実は、そこに80%以上の経営者の方が、助成金を活用できない鍵があるのではないかと思います。
セミナーや無料診断だけでは限界が・・・
先程の事例でもわかりますように、助成金は、たとえ支給要件を満たしていたとしても、申請手順を誤ってしまえば、助成金を受給することはできません。
ところで、経営者の方が、助成金についてのそれなりの知識があり、自らの意思で助成金を利用する場合には、基本的にタイミングを逸することはありません。
しかし、もし、経営者の方が、助成金のことを全く知らずに、例えば、今回の事例で言えば、パートタイマーを正社員へ転換するような何らかの行為を行った時に、その行為で助成金を受給することできことを何処かの時点で知った時に、その時点であっても、正しい手順で申請をすることができるかが、助成金を利用できるどうかの分かれ道となってしまいます。
助成金を業務としている専門家は数多くいます。
しかし、誰もが自らの顧問先等であれば、普段から受給可能な助成金について経営者に周知することも可能でしょうが、全く縁の無い人に、タイミング良く助成金を紹介することは不可能なこととなってきます。
ところで、このような状況があるため、助成金セミナーやネット上では助成金無料診断等が行われています。
このような取組む自体は、決して悪い事では無いと思います。
実際、以前、私もHPで無料診断を行っていたこともあります。
ただ、これは、私の個人的な見解ですが、助成金セミナーや無料診断で経営者の方が、助成金を今以上に活用できるようになるか?と言われれば、疑問が残ります。
現在、助成金の種類は、40種類以上に上ります。
しかし、現在の助成金においては、経営者の意思で助成金を受給できるものはほとんどありません。
少し前になりますが、60歳以上の雇用保険に加入している従業員を一年以上雇用している会社が、定年を延長等すると受給できる助成金が、ありました。(現在では、65歳超雇用推進助成金があります。)
このような助成金でしたら、経営者が、助成金を提案された時点で、利用の意思があれば、受給に結び付きます。
しかし、現在、定められている助成金は、今回の事例のように、パートタイマーを正社員に転換するとか、就職困難者をハローワークを通じて雇用するというように経営者の意思だけでは、どうにもならないものがほとんどです。
となると、経営者の方が、助成金セミナーや無料診断を利用した時に、丁度、そのタイミングなら良いのですが、そのようなケースは、本当に稀と言えます。
セミナーや無料診断を主催する側としては、「このような場合に助成金が利用できますから、そのような時には、ご連絡下さい。」という形で終わってしまいます。
しかし、経営者にとってみれば、すぐにでも助成金があるかもしれないのでセミナーに参加したり、無料診断を利用するのであって、余程、助成金に関心がある方は別として、ほとんどの経営者は、その時点で、受給できる助成金がなければ、助成金の詳しい内容については、まず忘れてしまいます。
その結果、本当に助成金を受給できる機会が訪れても、せっかくのチャンスを逃してしまうこととなってしまう可能性が高いのです。
となると、助成金を上手に活用するには、常に助成金が経営者にとって身近な存在である必要があります。
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経営者の方からのアクションが大事
では、経営者にとって助成金を身近な存在にするにはどうすれば良いのでしょうか?
経営者の方が、常に助成金に関する情報を入手したり、気軽に問い合わせができる専門家と知合いになるなど方法はいくつかあるかと思います。
しかし、現実問題、経営者の方が、助成金にまで手が回らないのが実情でしょう。
また、助成金の専門家と知り合えても、専門家も会社の実情がわからなければ、なかなか助成金の提案ができないのが実情です。
となると、重要なポイントとなってくるのが、経営者の方からのアクションです。
私は、企業が上手に助成金を上手に活用する最大のポイントは、この「経営者の方からのアクション」だと考えています。
経営者の方が、「この助成金、うちでも使えるかな?」「同業者が助成金をもらった、と聞いたけど、当社はどうだろう?」といったことをまめに行政官庁や専門家に聞くことが、助成金活用に繋がる最も近道だと思います。
もちろん、全ての場合で、助成金の活用に繋がるわけではありませんが、行政官庁や専門家の側からしてみれば、聞いてくれれば助成金の活用の可能性を模索することができるわけです。
当事務所を含め、助成金の無料相談を行っている事務所等は、多々あるかと思いますので、是非、積極的にご活用されると良いかと思います。
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社会保険労務士 松本 容昌
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