Q54.有給休暇の計画的付与とは、どのような制度なのでしょうか・・・?


 
【質問】
 
「当社では、有給休暇の取得率がなかなか向上しないのが実情です。有給休暇の取得率をを上げるために、計画的付与という制度を導入している会社もあると聞きました。有給休暇の計画的付与制度とはどのような制度なのでしょうか?」
 
【回答】
 
「有給休暇の計画的付与制度は、有給休暇の取得率を高め年間労働日、年間労働時間を短縮することを目的として導入された制度です。年次有給休暇の5日を超える部分については、労使協定により事業所全体で一斉に取得する等の計画的付与ができます。」
 
【解説】
 

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有給休暇は、労働者に与えられた権利ですが、労働者が、その権利を行使するかはどうかの選択は、法律では規定がありません。

ですから、労働者が、有給休暇の取得を申請せず、全く有給休暇を取得しなくても法律上は問題ありません。

しかし、現実には、「有給休暇が取り難い」というのが、実情とも言えますので、有給休暇の取得率を向上させることは、長年の日本経済の課題とされてきました。
 
 
有給休暇の取得率を向上させる意味でも、有給休暇の計画的付与という制度があります。

有給休暇の計画的付与とは、予め使用者が、休日を指定しておきその日を有給休暇とするものです。

ゴールデンウィークや8月の連続休暇時に本来の公休日や祝日に休暇を加算する場合等に利用されています。
 
 
実は、この有給休暇の計画的付与は、事業主の方には、意外に知られていて、私自身もよく質問を受けます。

有給休暇の計画的付与は、労働者にとっても結果的には休日が増えるわけですから、制度を導入すること自体は好ましいと言えます。

ただし、有給休暇の計画的付与には、注意しなければならない点がいくつかあるのでお話ししたいと思います。
 

まず、有給休暇の計画的付与は、有給休暇の付与日数すべてについて認められているわけではありません。

それは、労働者が病気その他の個人的事由による取得ができるよう指定した時季に与えられる日数を留保しておく必要があるためです。
 
 
具体的には、計画的付与の対象とできる日数は、各労働者が、保有する有給休暇日数の5日を超えた分となります。

つまり、5日間は、労働者が、自由に使用できることとなります。
 
 
例えば、有給休暇の付与日数が10日の労働者に対しては5日、20日の労働者に対しては15日までを計画的付与の対象とすることができます。
 
また、有給休暇は、次年度まで繰り越すことができますが、繰り越された日数がある場合には、繰り越された有給休暇を含めて5日を超える部分を計画的付与の対象とすることができます。
 


さて、有給休暇の計画的付与ですが、これは事業主が一方的に規定することができません。

まず、就業規則に計画的付与を行う旨を規定する必要があります。
 
 
さらに、実際に計画的付与を行う場合には、年度毎に付与日数や付与する日程も異なってきますので、労働者代表と労使協定を締結する必要があります。
 
つまり、有給休暇の計画的付与は、労使の合意があって初めて実施できるものです。

ちなみに、有給休暇の計画的付与について労使協定は、労働基準監督署に届出る必要はありません。
 
 
ところで、有給休暇の計画的付与には、1つ考えなければならない点があります。
 

有給休暇の計画的付与については、労使協定の締結と計画的付与の対象とできる日数は、各労働者の付与日数の5日を超える分という2点が、労働基準法により規定されている事項ですが、ご存知のように、有給休暇は、入社後6ヶ月を経過後に労働者に付与されます。

ですから、例えば、ゴールデンウィークに有給休暇の計画的付与を行なおうとした場合に、その予定日に有給休暇が付与されていない労働者が存在する可能性があるのです。
 
 
もちろん、有給休暇が付与されていない労働者については、通常通り出勤させても問題ありませんが、他の多数の労働者が休業している事業所に数名のみ出勤させるのも常識的に考えると疑問が残ります。

この点に関しては、法律の規定がないので、どのように取扱うかは、事業主の任意となりますが、特別休暇等を与えて対応せざる得ないかと思います。
 
 
では、有給休暇が発生していない労働者に対して、特別休暇等を与えなかった場合には、経営者はどのように対処する必要があるのでしょうか?

有給休暇の計画的付与の対象とされない労働者は、労働する権利を有することとなります。
 
 
業種によっては、一部の労働者が出勤して労働することも可能かと思いますが、工場等の場合には、製造ライン等の関係でそれができない場合もあります。

そのような場合には、経営者は、有給休暇の計画的付与の対象とされない労働者に対しては、休業を命じざる得ないこととなります。
 
となると、労働基準法第26条で定められた、平均賃金の6割以上の休業手当の支払いが原則として必要となってきます。
 
 
また、有給休暇の計画的付与は、労使協定の定めによって付与されることとなりますので、経営者が、一方的に付与日を変更することはできませんし、また、労働者も労使協定に定められた日に休暇を取得しないことは一般的には認められていません。
 
労使協定で定められた日を変更する場合には、労使協定を再度締結する等の適切な手続きを取る必要があります。
 
 
このように有給休暇の計画的付与は、有給休暇の取得促進には有益な反面、予め解決しておくべき問題もありますので、制度導入の際には、是非、ご参考になさって下さい。
 
 
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社会保険労務士 松本 容昌
 


 

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