賃金は、労働条 件の中で最も重要な要素であるため、様々な規制が法律で定められています。
今回は、その中でも最も重要と言える、賃金支払いの5原則についてお話したいと思います。
賃金支払いの5原則は、適正な労務管理を考える上で、根幹となるものです、是非、正しく理解していただきたいと思います。
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賃金は、小切手や外国紙幣での支払いは認められていません
賃金は、まず第1に通貨で支払わなければなりません。
ここで言う通貨とは、いわゆる銀行券や硬貨です。
従って、小切手や現物給与による支払いは禁止されています。
また、紙幣であってもドル等の外国紙幣での支払いも認められていません。
ただ、従業員の同意を得た場合には、従業員が指定する銀行口座への振込みよる支払いが認められています。
賃金は、代理人に支払ってはいけません!
次に、賃金は直接労働者に支払う必要があります。
これは、直接支払いの原則と言われるものですが、これは非常に重要な点といえます。
直接労働者に支払わなければならないので、労働者の委任を受けた代理人であっても支払う事は禁止されています。
また、未成年者も独立して賃金を請求する事が出来るので、その親権者や後見人に支払う事も禁止されています。
ただし、労働者が病気等のやむ得ない理由により受領できない場合に妻子等の使者に支払う事は差し支えないとされています。
代理人と使者との違いは少しわかり難いところですが、ここで是非憶えておいていただきたいのは、第3者の者が代理人と称して賃金を受け取りに来た時です。
労働者が業務中以外の何らかの金銭問題等で、その債権者が賃金を受取に来る場合というのが考えられます。
仮に代理人と称する者に支払ってしまったらどうなるでしょう?
先程書きましたように賃金を代理人に支払う事は法律で禁止されています。
従って、たとえ代理人と称する者に賃金を渡したとしても、賃金を支払った事にはそれはならず、労働者から請求があれば賃金を支払わなければならなくなってしまいます。
ですから、賃金は、必ず労働者本人に支払う事をご注意下さい。
先程の、「賃金は通貨で支払う」のところで書きましたが、銀行口座への振込みは基本的に労働者の同意が必要です。
ただ、この直接払いに関して、銀行口座振込であれば、問題が起きる可能性は非常に低くなります。
また安全性や利便性を考慮すれば銀行口座への振込の方が良いと言えます。
強要は出来ませんが、労働者の理解を得るようにしてなるべく賃金は銀行振込等で行う方がトラブル防止にもなるかと思います。
賃金は、最低月に一度は支払う必要があります
第3に賃金は、毎月1回以上支払う必要があります。
労働者が安定した生活を送るためには、賃金の支払いは毎月1回以上支払う事が求められます。
従って、ある月賃金の支払いが無く、翌月に2か月分まとめて支払うような支払い方は法律違反となります。
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賃金からの控除には注意が必要です
次に「全額払いの原則」ですが、賃金はその全額を支払わなければならないと定められています。
一見すると当たり前のように聞こえるかもしれませんが、実は、この「全額払いの原則」は注意が必要です。
例えば、基本給15万円と定めた労働者に対して、実際に支給する金額は、健康保険等の各種保険料や所得税等の税金、また組合費や旅行積立金等が控除されて支給されるケースが殆どかと思います。
よく考えてみると、法律では賃金は全額を支払わなければならないと定められているのであるから、本来なら全額の15万円を支給しなければなりません。
しかし、各保険料や税金をそれぞれ各労働者が納めるとなると手続き面で非常な煩雑さが発生してしまいます。
従って、全額払いが、原則ですが、例外を認め、各保険料や税金は、法律で控除する事を認めています。
また、労働者代表との書面による協定がある場合には、社宅費や、社内預金等事理明白なものに限って控除が認められています。
ですから、社宅費や組合費等は、給料から当然控除できるのではなく、あくまで労働者代表との書面による協定がある場合に限られます。
まず、この点に注意が必要となります。
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損害代金等は賃金から控除できません
さらに重要なのは、たとえ労働者代表との書面による協定があっても、賃金から控除できるのは、あくまで社宅費や組合費等事理明白なものに限られます。
よく相談され事例なのですが、従業員が事故を起こし社有車を破損させてしまったり、会社の備品等を破損してしまった場合に、その損害金を給料から控除したいところですが、損害金は事理明白ものに該当しないため賃金から控除する事は許されないのです。
ここの点は、多くの事業主の方が誤解している点ですので、注意が必要で是非ご理解いただきたいと思います。
賃金は、決まった期日に支払うことが必要です
最後に「一定期日払いの原則」についてお話したいと思います。
賃金は、毎月一定期日に支払う必要があります。
つまり、毎月15日や25日というように暦日で決めても結構ですし、また月の末日、月の初日といった決め方でも問題ありません。
ただし、「15日から20日の間」といった日が特定しない決め方は、法律違反となってしまいます。
また、月給の場合で「毎月第2土曜日」といった決め方も、月7日の範囲で変動してしまうため、法律違反となってしまいますので、ご注意下さい。
なお、支払日が休日にあたる場合には、支払日を繰り上げまたは繰り下げして支払うことは認められています。
このように、賃金は労働者にとって最も重要な労働条件であるため、賃金支払いに関して法律で厳格に定められているため、今回ご説明した「賃金支払いの5原則」についてはご理解いただきたいと思います。
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社会保険労務士 松本 容昌
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