【質問】
 
「当社は、運送業なのですが、先日、従業員が業務中に誤ってトラックの荷台から落ちてしまいました。業務中の事故なので、労災の適用となるかと思いますが、当社は、創業5年になりますが、これまでの労災事故はなく、申請の方法がよくわかりません。労災を申請するにはどのような手続きをすれば良いのでしょうか?」
 

【回答】
 
「労災事故が起こった場合には、まず、治療費等に対する給付の申請を病院等に対して行います。ただし、治療等を受けた病院等が、労災指定病院以外の場合は、治療費等を一旦立替えて、後日、労働基準監督署に治療費等の請求の申請を行います。」
 

【解説】
 
一般に労災と呼ばれていますが、正式には労働者災害補償保険(労災保険)と呼びます。
 
ただ、ご質問者様も労災という言葉を使っていますので、ここでもわかりやすくするために単に「労災」という言葉を使いたいと思います。

労災の申請は、実は、種類がいくつかあり非常に複雑なところがありますので、ここでは、まず労災の事故が発生した場合に、最初に行うべき治療費等についての申請についてお話ししていきたいと思います。

労災でまず最初に行う申請は、病院等で治療費等の給付を受けるための申請を行います。
 
 
まず、ここで覚えておいていただきたい点ですが、治療費等を受けるための申請は、治療等を受けた病院が、労災指定病院か否かによって申請の方法が変わってきます。

治療等を受けた病院等が、労災指定病院の場合は、その病院に療養補償給付の申請書(様式第5号)という書類を提出します。

申請書には、労災の事故で負傷等した従業員の住所、氏名、生年月日、事故が発生した日時、事故の発生状況等を記入し、会社印及び従業員の署名捺印をして、治療等を受けた病院に提出します。
 
 
この申請書は、労働基準監督署等ではなく、病院等へ申請することとなります。

ここで、実務的な注意点ですが、実際、労災が発生し、従業員が治療等を受けると同時に、労災の申請書を病院等へ提出することは時間的にほぼ不可能です。

ですから、最初に治療等を受ける時に、まず病院等に労災事故であることを告げ、後日、申請書を病院等へ提出することとなります。
 
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労災が適用されれば、従業員は、治療費を一切支払うことなく治療を受けることができるので、初診日の治療費も本来は支払う必要がないのですが、ただ、申請書が出ていないので、申請書が提出されるまでの治療費等の取扱いについては、病院の指示に従うこととなります。

これはあくまで私見ですが、以前は、「後日、労災の書類を持ってきます」と言えば、治療費の支払いを求める病院は、ほとんどなかったのですが、最近は、申請書が提出されるまで、治療費の支払いを求める病院等が増えてきている感じがします。

ただし、一旦、治療費を支払っても、労災の書類が提出されれば、支払った治療費は、返金されます。
 
 
ただ、ここで注意が必要なのですが、病院は、医療費の精算を月毎に行います。通常は、翌月の5日位までの精算業務が行われるケースが多いようです。

医療費の精算業務が終わるまでに、労災の申請書を提出すれば、支払った治療費等は単純に返金してくれるのですが、申請書の提出が精算業務の終了に間に合わなかった場合には、病院から単純に返金してもらうことができなくなってしまい、国に対して医療費還付の申請の手続きを行わなければならなくなってしまいます。
 
 
ただ、これは全ての病院等が、一律に行っているわけではなく、個人病院の場合には、労災の申請書の提出がある程度遅れても、単純に治療費を返還してくれる場合もあるのですが、総合病院等の場合には、一旦、医療費の精算業務が終わってしまうと、返金には応じてくれない場合が多いようです。
 
 
月末に事故が起こってしまった場合には、労災の申請書の提出が、病院等の精算業務終了までに物理的に間に合わない場合もありますが、労災の場合、治療費の10割を立替える必要があり、従業員にとって負担となりますので、労災の申請書は、従業員が病院等へかかった場合には、なるべく早く提出する必要があることを認識して下さい。

ところで、労災の申請書の提出が、病院等の精算業務の終了に間に合わなかった場合の手続きの方法ですが、これは、次にお話しする、治療等を受けた病院が、労災指定病院以外であった場合と同じ申請の方法を取ります。
 
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次に、従業員が労災の事故で負傷等し、病院等で治療を受ける場合に、その病院等が、労災指定病院以外の場合の、労災の申請について説明したいと思います。

治療等を受けた病院が、労災指定病以外の場合では、治療費を一旦従業員なりが立替えることとなります。

そして、その後、療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号)という書類に、医師等の証明や事故の発生状況等、先程、お話しした様式第5号の場合と同様の事項を記入し、領収書の原本を添付して、労働基準監督署に提出します。

様式第7号の場合、申請先は、治療等を受けた病院ではなく、労働基準監督署となります。
 
 
ところで、このように、労災を申請する場合、治療等を受けた病院等が、労災指定病院以外の場合には、一度、治療費等を立替える必要があり、また、その立替え分が、還付されるまでには、数ヶ月かかってしまいます。

ですから、労災が起こった場合には、労災指定病院へ治療等を受けると経済的な負担が少なくなることは事実です。

ただ、実際には、労災で負傷等した従業員のかかりつけの病院等が、必ずしも労災の指定を受けているとは限らないので、可能な範囲で労災の指定を受けた病院等で治療を受けることを薦めるのが良いかと思います。
 
 
ところで、労災の大きさによっては、治療等の期間が長期に及ぶ場合も考えられます。

しかし、治療等が長期に及ぶ場合であっても、労災指定病院以外で治療等を受ける場合、全て治療費を立替える必要があります。

このような場合、従業員が治療費を立替えることとなると、経済的な負担が大きいので、治療費等の立替え分の還付の申請は、負傷等が完治する前でも、一定期間分を請求することは可能です。

ですから、治療等が長期間に及び場合には、1ヶ月毎位で、労災の申請を行っていけば良い思います。

最後に、先程、お話しました、労災指定病院で治療等を受けた場合で、労災の申請の書類(様式第5号)を病院へ提出する間、治療費等を一旦支払った場合で、その申請の書類の提出が、病院等の医療費の精算業務の終了までに間に合わず、病院等から治療費等の還付を受けることができない場合には、今、お話しした、様式第7号の書類を使用して、労働基準監督署に提出して、治療費の還付を受けることとなります。
 
 
最後に少し補足ですが、労災の事故によっては、病院等ではなく、整体や接骨院等の治療院へ通う場合も考えられます。

整体や接骨院等の治療院は、病院等では無いので、基本的には、今、お話しした労災指定病院以外の取扱いをするのですが、実は、治療院中には、労災指定病院と同じ取扱いができる治療院があります。

つまり、労災指定病院の場合と同じように、労災の申請書類を治療院へ提出すれば、その後は、治療費を支払うことなく治療を受けることができます。
 
 
ただ、当然、全ての治療院が、その指定を受けているわけではないので、その都度、治療院へ確認する必要があります。

なお、この場合の申請の書類は、労災指定病院用の様式第5号ではなく、治療院専用の申請書類を使うので、詳しくは、労働基準監督署にお問い合わせ下さい。

いずれにしても、労災の申請は、治療等を受ける先によって、申請に使う書類が違ってきますので、その都度、確認して業務を行う必要があります。

ご参考になさって下さい。
 

 
社会保険労務士 松本 容昌
 
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