【質問】
 
「給料にも時効があるとききました。給料の時効とは具体的には、何年なのでしょうか?もし、未払いの給料があっても、時効にかかれば、支払う必要がなくなるのですか?」
 

【回答】
 
「給料請求権の時効は、2年間となりまます。確かに未払い給料があった場合に、時効が成立すれば、未払いの給料を支払う必要はなくなりますが、労働基準監督署等の調査があった場合には、時効を根拠に支払い命令が出される場合があります。」
 

【解説】
 
「時効」という言葉はご存知だと思います。

時効とは、他人の物または財産権を一定期間継続して占有等する者に、その権利を与える取得時効と、反対に一定期間行使されない場合、権利を消滅させる消滅時効がります。

労務管理において主に関連があるのが、後者の消滅時効です。
 
 
例えば、雇用保険や社会保険に未加入であった労働者を溯って加入させようと場合、最大で2年間溯ることができます。

何故、最大で2年間かと言いますと、これは国が、労働者から保険料を徴収する権利が2年間で時効になってしまうからです。

ですから、たとえ労働者が3年分保険料を払うから、と言っても、2年以上遡及加入することはできません。

同じように、労働者が使用者に対して支払請求も2年間で時効により消滅してしまいます。

つまり、何らかの事情で労働者に賃金を支払わなかった、としても2年が経過すれば、使用者は、法律的にその未払い賃金を労働者に支払わなくても良くなります。

これだけを見れば、「時効」という制度は、経営者にとって凄く有難い制度と思えますよね。
 
 
しかし、時と場合によっては、この「時効」という制度が、経営者にとって恐ろしい制度になる場合があるのです。

例えば、10年以上の長期に渡って労働者に割増賃金の不払いがあったとします。

そして、労働者の申告等によって、労働基準監督署の調査が入ったとします。

割増賃金の不払いが間違い無ければ、明らかな法律違反ですので、使用者側に弁解の余地はありません。
 
 
では、次に問題となるのが、10年以上割増賃金の不払いが続いていたわけですから、いつまで溯って支払うかです。

使用者は、当然支払い期間を短くしたいと考えます。例えば、1ヶ月、3ケ月と・・・。

しかし、使用者が考える期間について、まったく根拠がありませんね。

国は、このように遡及してある年月日を決める時に、根拠のない年月日を指定することは基本的にはしません。
 
 
つまり、ここで「時効の2年間」が登場するのです。

消滅時効にかからない現在から2年前までの期間の不払賃金支払うということであれば>法律的に根拠が出てきます。

仮に10人の労働者に残業代の不払いが月2万円あったとします。仮に10年以上不払いが続いていたとしたら、最大で10人×2万円×24ヶ月=4,800,000円を支払命令が出る可能性があるのです。

「そんな金額支払えない!」と言っても、これは国からの支払い命令ですので、交通違反の罰金と同じようなものです。

支払いを拒めば、最悪起訴されてしまう場合もあります。
 
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ところで、割増賃金の不払いで監督署の調査を受けた場合に、「3ケ月間分を支払った」という事業主の方の声を聞いたことがあるかもしれませんね。

私も、実際何人かの事業主の方のそういったお話を聞いたことがあります。
 
 
でも、ここで勘違いしないで欲しいのです。

この3ケ月間と言うのは、様々な要因の結果たまたま3ケ月間で済んだだけの話です。

労働基準監督署に、不払いの割増賃金の遡及期間は3ケ月でいいですか?と聞けば、絶対に「良い」とは言いません。

ですから、不払い割増賃金の調査を受けても、3ケ月分程度支払えば済むから、と絶対に安易に思わないで下さいね。
 
 
現在、割増賃金の不払いについて、弁護士や司法書士の方々活発に活動しているとの話を聞きます。
 
割増賃金は、法律で定められているため、不払いが確かなら弁解の余地が全くありません。

それこそ「残業代払ったら、会社が潰れる」と言っても見逃してはくれません。

遡及して何百万円も一度に支払ったら、本当に経営が苦しくなってしまいます。
 
 
しかし、毎月きちんと法律通りに支払えば、決して楽とは言えませんが、それを予め経費に組み込むことができ、それを前提で事業経営が出来るはずです。

その上で利益を出せるように頑張る。それが本来の姿ではないでしょうか?法律遵守は、本当に大切だと思います。
 
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時効と雇用保険


最後に時効と雇用保険について少し触れておきたいと思います。

労務管理において「時効」というものは、今回、お話しした賃金との関係以外にも、実は、重要な事項と言えます。
 
 
例えば、労災保険や健康保険の各給付についてもそれぞれ時効が定められています。

時効が成立してしまえば、本来、給付金を受け取ることが出来たにも関わらず、給付を受けることができなくなってしまいます。
 
 
ところで、給付の反対の保険料を遡及する期間についても時効が定められています。

実は、この保険料を納付に関しての時効も、労務管理を行う上で、正しく理解する必要があります。

ここでは、雇用保険を例にお話したいと思います。
 
 
雇用保険は、労働者が失業した時に、一定期間、保険給付(失業等給付)を行うことを主な業務としています。

失業給付を受けることができる期間は、雇用保険の加入期間によって決まります、当然、加入期間が長ければ、給付期間も長くなります。

雇用保険は、1週間20時間以上で31日以上雇用見込みのある労働者を雇用した場合には、翌月10日までに加入の手続きを取る必要があります。

加入後は、労働者及び使用者は、一定の保険料を負担することとなります。
 
 
ところで、雇用保険の保険料を溯って納めることができる期間、つまり、保険料の納付の時効は、2年といます。

つまり、本来、雇用保険に加入すべき労働者の加入手続きを忘れてしまった場合に、遡及できるのは、最大で2年間となります。
 
 
現在、自己都合退社した場合に受取ることができる失業給付の日数は、加入期間が1年以上10年未満で90日、10年以上120日、20年以上で150日となります。(加入期間という言い方は、少し正確性に欠けますが、ここでは詳細についてのご説明は割愛させていただきます。)

となると、もし、ある労働者の雇用保険の加入手続きを忘れてしまって、そのままその労働者が10年以上勤務し、どこかの時点で、未手続きに気が付いた場合、溯って雇用保険に加入できるのは、2年間分だけとなります。

結果的に、その労働者は、失業給付を30日分以上受給できなくなってしまう可能性があります。
 
 
このように保険料を溯って納めることができる期間にも時効が定められています。

その時効によって、今回、ご説明したような、本来、受給することができた給付金を受給できなくなってしまう場合がありますので、保険関係の手続きは正しく行うと共に定期的なチェックが大切となってきます。
 

 
社会保険労務士 松本 容昌
 
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